研究課題/領域番号 |
15K09120
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
大竹 寛雅 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (60593803)
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研究分担者 |
新家 俊郎 神戸大学, 医学部附属病院, 准教授 (60379419)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 血行力学的因子 / プラークの不安定化 |
研究実績の概要 |
a)TPF plaque study: ACC 2016でposter発表を行った、中等度狭窄病変(非責任病変)における、OCT (optical coherence tomography)とCTの計測値の整合性についての研究結果を論文にまとめ、現在英文誌に投稿中である。また、CTを用いて算出したAPS (axial plaque stress), WSS (wall shear stress)がOCT上の不安定プラークの指標であるThin-cap fibroatheromaの分布と強く関連していることを明らかにし、米国TCT学会2017総会で発表した。本検討に関しては、より詳細な検討結果を加え、日本循環器学会総会においてもfeatured reseach sessionで口述発表し、現在論文作成中である。近日投稿の予定である。 b) TPF stent study: すでに登録された30症例に対し、8 カ月後にOCT を施行。前30例における留置直後の血行力学的シミュレーションが終了し、現在は8か月後の血行力学的シミュレーションを数例残すのみとなっている。 c) CFDソフト開発: 林公祐PhD(神戸大学工学部准教授)らの協力によりプラークを有する複雑な冠動脈形状に適用できかつ高速計算が可能な格子ボルツマン法に基づく流体計算ソフトウエアをフリーの開発環境で独自に開発する。現在数例における検討を行っているが、特に石灰化病変における内腔の描出をいかに正確に行うかにおいて検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
a)TPF plaque study:本検討においては、第一段階における重要な障壁であったCTとOCTのマッチングが順調にすすみ、現在は本来の目的であった血行力学的因子がプラークの不安定化や増加に及ぼす影響を検討する段階に入っている。多くの血行力学的因子の中で重要になりうる因子の抽出やそれぞれの概念について、2名の米国の協力研究者と繰り返し会議を行うことにより適宜問題解決しながら進めている。現在の問題点は、CTとOCTのマッチングの微妙なズレが予想外にAPSの分布に大きな影響を及ぼすことが明らかになった点である。しかしこれに関しても、wireの情報をマッチングの際に利用し、またより広範囲における傾向も同時に見ることで解決しつつあり順調に進んでいるといえる。 b) TPF stent study: stent内のsimulationはプラーク部分のそれと比して技術的に困難であり、その分、モデルの構築、simulationの施行に時間を要していた。特に、留置直後のsimulationはそのmodel creationの基礎の段階から構築する必要があるため時間を要したが、これに関してはすでに登録全例が終わっており当初の予定通りおおむね順調に進んでいるといえる。 c) CFDソフト開発: 本試みに関しては石灰化症例における正確な内腔の同定を行う点が困難であるが、ソフトの改良、至適撮像条件の検討など現在改良を重ねているところである。
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今後の研究の推進方策 |
a)TPF plaque study:本検討においては、現在短軸方向の血行力学的因子のマッチングが終了している。結果、血管壁にかかるWSSやAPSといった血行力学的因子はプラークの不安定化に関与している傾向を示していることがわかった。その一方で長軸方向における検討が不十分であるとの指摘を受けており現在その点について改善しているところである。これに関しては現在、狭窄部位やその前後に分類し、それぞれの部分における血行力学的因子とプラークの不安定化の関係に関する検討を開始したところである。引き続き定期的なカンファレンスを行いこれらの問題が改善され次第論文作成を行う予定である。 b) TPF stent study: stent内のsimulationはプラーク部分のそれと比して技術的に困難であり、その分、モデルの構築、simulationの施行に時間を要しているが、登録症例のうち 留置後に関しては全例、フォロー時に関しては8割のsimulationが終了しており当初の予定通りおおむね順調に進んでいるといえる。全例の結果が出次第、各種国際学会での発表、英文誌への投稿を予定している。 c) CFDソフト開発: 本試みに関しては現状preliminaryに選定した症例を用いてpreliminary versionの開発を開始したところである。石灰化症例における正確な内腔の同定を行うことを目標に現在改良を重ねているところである。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は解析に必要な画像解析ソフトや研究協力者との意見交換、会議を通した専門的知識の提供に対する謝金が支出の主であった。また予定していた血清サンプルを用いた検討に関しては最終的なサンプル数の確定と、項目の決定に時間を要したため次年度に持ち越しとなっている。そのため計上していた使用額を次年度に繰り越す必要があった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、血行力学的因子とプラークの関係に加え、様々な採血項目(炎症性マーカー、接着因子、脂質メディエーターなど)に関する検討も加え、より基礎的な部分へのアプローチを進めていく予定である。そのための費用を別途使用予定である。また次年度も本年度と同程度、研究協力者との意見交換、会議が必要であり専門的知識の提供に対する謝金が同程度発生するものと考える。また、本年度は論文投稿を予定しておりそれに付随する費用も予定している。
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