研究実績の概要 |
様々な疾患の病態とDNA損傷修復系との関連が明らかにされている。糖尿病、高血圧、喫煙、脂質異常症、加齢などの心血管病危険因子が疾患発症に寄与する度合いは各個人の細胞の応答の違いによって異なることから、個々人の細胞応答の結果を包括的に表す指標として、単核球内DNA二本鎖切断量を候補とし検証した。臨床症状、あるいは危険因子から心血管疾患が疑われ、頸動脈エコー、心臓CT、あるいは冠動脈造影を行う患者を対象とし、単核球内DNA二本鎖切断量測定をリン酸化ヒストンH2AX(γH2AX)抗体を用いて検出した。単核球内DNA二本鎖切断量と患者の有する個々の心血管病危険因子との関係および現存する動脈硬化の有無、程度との関係を検討した。 実験にあたっては、γH2AX抗体を用いた単核球DNA二本鎖切断定量の信頼性を増すために、MetaSystems (MetaSystems Hard & Software GmbH, Althlussheim, Germany)を用いた自動撮影システムおよびMetafer classifer (MetaSystems)によるfoci数の自動カウントシステムを構築した。 64人の患者を解析した。現在男性49人、女性15人、年齢(平均±標準偏差)61.8±8.9歳であった。 単核球内DNA二本鎖切断量は、動脈硬化の有無ではなく、ある特定の危険因子との間に相関を示すことが判明した。このことはリスクの層別化に寄与するという点で重要であり、引き続き症例数を増やすと同時にその機序についても検討を進める。
|