研究課題
正常血管において、血管内膜へは血管内腔から直接、一方血管の中膜・外膜へはvasa vasorumから酸素や栄養が供給されている。しかし、動脈硬化進展に伴い、血管内膜が肥厚すると血管内腔からの血管壁への栄養が不十分となり、代わりにvasa vasorumが増殖し酸素や栄養の主な供給源となるため、vasa vasorumが動脈硬化進展に重要な役割を果たしていると考えられている。動物実験の報告では、vasa vasorumの増殖と動脈硬化進展との間に関連性が示唆されている。一方、ヒトにおいては、これまでの報告がすべてex vivoや剖検例での極めて少数例の報告である。また、生体内でvasa vasorumを画像化する方法がなかった事から、客観的な定量評価が不可能であった。近年、我々のグループは光干渉断層法(OCT)を用いた冠動脈粥状動脈硬化病変内のvasa vasorumの存在が冠動脈粥状動脈硬化病変の不安定化に関連している事を見いだした。しかし、第2世代OCTを含め商用OCTの血管長軸方向の解像度は200μm以上であるため、平均30μmとされるvasa vasorumを生体内で3次元的に検討する事は困難である。さらに近年我々は血管長軸方向の解像度が3μmの高解像度カテーテル型OCT(HD-OCT)システムのプロトタイプ開発に成功した。上記の背景を踏まえ、本研究の目的では以下の4点である。①血管長軸方向の解像度が3μmのHD-OCTシステムを完成させる。②HD-OCTシステムが動脈硬化病変内に存在するvasa vasorumを生体内で画像化し、自動解析する画像解析システムを開発する。③正常冠動脈及び動脈硬化病変のvasa vasorumの3次元解剖構造を明らかにする。④vasa vasorumが動脈硬化病変の影響血管として、その発生・進展・不安定化に重要な役割を果たしているという仮説をヒトで証明する。
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