可溶型(s)LR11濃度が、PAH患者で上昇していることを見出しているが、本研究では、診断、治療効果判定のバイオマーカーとして確立を目指すと同時に、PAHへの新たなる治療薬の開発に挑む。2群PH(左心疾患に伴うPH)である僧房弁閉鎖不全症に伴うPH(n=38)では、PH(-)群と比し、PH群でLR11濃度が有意に上昇しており、平均肺動脈圧、平均肺動脈圧-肺動脈楔入圧とLR11は正の相関が認められ、2群PHにおいて肺動脈リモデリングを生じている可能性が示唆された。また血清sLR11濃度9.4ng/ml以上の群では予後が9.4ng/ml未満群と比較し、予後が不良であり、2群PH患者の予後判定の指標になる可能性を見出した。 基礎研究ではLR11欠損マウスを用い、低酸素惹起性肺高血圧発症の抑制を証明した。本研究期間ではヒトPAH病理像を再現するモデルとして開発された肺高血圧ラットモデル(VEGF受容体拮抗薬(Sugen 5416)皮下注+低酸素3週飼育+常酸素10-11週飼育)(Abe K.Circulation2010)を用い、経時的に肺組織中LR11発現を分子生物学的手法で解明する。病理所見とLR11発現の関係を見ることで、実際にヒトでみられる病初期(中膜肥厚)から末期(plexiform lesion)で、LR11がどの時期に発現し重要か、明らかになる。また血清sLR11濃度を測定しバイオマーカーとしての有用性を明らかにすることで臨床研究でのバイオマーカーとしての裏付けができる。Sugen肺高血圧ラットモデルでは、肺組織でLR11蛋白発現が、病初期より末期像で低下しており、病期とLR11発現との関係を1年間延長して検討する。
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