研究実績の概要 |
日本は超高齢化社会となり、心血管疾患の予後に心不全管理は重要な問題となっている。本研究では心不全の病態機序や増悪に対する、T細胞免疫記憶、エフェクターT細胞 (Teff)の分化増殖、TeffであるヘルパーT細胞(Th)や障害性T細胞(CTL)、炎症性サイトカインの関与について検討した。 心不全では活性化したCD4 T細胞、CD8 T細胞の割合が高く、サイトカインIL6、IFNγ、IL17、Granzyme Bが重症度の指標であるNYHA分類の増悪につれ上昇していた。T細胞メモリー分画では、Naive T細胞やセントラルメモリーT細胞(TCM)に対し、エフェクターメモリーT細胞(TEM)およびエフェクターT細胞(TEMRA, Teff)の割合が高かった。特に、重症心不全NYHA III+IV群では、TEMRAのうちIFNγ産生CD4 T細胞、IFNγ産生CD8 T細胞、perforin+granzime+CD8+T細胞の増加を認め、重症化にCD4+Th1やCD8+ CTLの関与が考えられた。さらに、TCMからTEM・TEMRA分化に関与するT細胞カリウムチャンネルKV1.3、KCa2.3の発現とKV1.3電流、KCa2.3電流を解析した。心不全の増悪により、特にNYHA III+IV群ではCD4 T細胞、CD8 T細胞ともにCCR7- Kv1.3発現の増加とKV1.3電流増加を認めた。 したがって、心不全患者ではT細胞が活性化し、Th1とCD8+CTLが心不全の発症、増悪に関与していると考えられた。エフェクターT細胞であるTh1、CD8+CTLの存在割合が高い原因としては、T細胞上のKv1.3発現と機能が亢進し、Naive T細胞やTCMからTEMやTEMRAへ分化が亢進していると考えられた。今後、心不全病態改善のため、T細胞Kv1.3を抑制する治療の研究を行なっていく。
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