研究課題/領域番号 |
15K09130
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
小倉 正恒 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 研究員 (30532486)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | HDLの質 / コレステロール引き抜き能 / 抗酸化能 / 粒子組成 |
研究実績の概要 |
これまでに様々な検体においてHDLの質であるコレステロール引き抜き能や抗酸化能の測定を進めている。コレステロール引き抜き能は放射性コレステロールでJ774.1 細胞をラベルし、患者血清から分離したHDL を添加することで行う。HDL分画の単離はポリエチレングリコールによる沈殿法を用いて行い、培地中の放射活性を、培地および細胞の活性で除した値をコレステロール引き抜き能とした。抗酸化能の測定は患者HDL分画に含まれる抗酸化物質によるラジカル吸収能を蛍光検出により測定するORAC 法で実施した。 まず、すでにスタチンで治療されている家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体患者227名のコレステロール引き抜き能を測定した。その結果、コレステロール引き抜き能の低下が年齢・性別と独立して角膜輪の存在の予測因子であること、加えて古典的な冠危険因子と独立してアキレス腱肥厚の程度、無症候性動脈硬化の指標である頚動脈内膜中膜複合体厚(IMT)、動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の既往の予測因子であることが判明した。コレステロール引き抜き能はHDLの量であるHDLコレステロール値よりも強いASCVDの予測因子であったことから、HDLの質の一つであるコレステロール引き抜き能は、スタチン時代の残余リスクマーカーおよび治療ターゲットである可能性が示唆された。 吹田コホート参加者の残余血液試料を用いたコレステロール引き抜き能、抗酸化能の測定は2,017名分のすべてが終了した。現在、これらのHDL機能と心血管病発症のリスクとの関連について統計解析を進めている。 心筋梗塞患者のHDL 機能を経時的に測定し、心筋梗塞の予後との関連性を明らかにする研究については、当初の目標症例数であった100例の収集が達成できた。コレステロール引き抜き能の測定は約80例分、抗酸化能の測定は約50例分完了しており、経過は順調である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
吹田コホートについては2017例のコレステロール引き抜き能、抗酸化能の測定が終了した。現在、HDL機能と心血管病発症のリスクとの関連について統計解析処理を行っている。 心筋梗塞患者のリクルートは当初の目標である100例を達成できた。現在、これらの患者における経時的なHDL機能を進めており、総じて7割くらい測定を完了している。
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今後の研究の推進方策 |
吹田コホートについては、統計解析処理中であり、今年度中に発表できる見通しである。また心筋梗塞患者におけるHDL機能測定は今年度前半には終了し、統計解析終了後に学会発表や論文化を進める。HDL機能を規定するものが何か、ということについての探索を進めるために、HDL中に含まれるアポリポタンパクやその他のタンパク質、機能性脂質としてリン脂質や脂溶性ビタミンの測定系の立ち上げおよび測定を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
交付前に購入していた放射性コレステロールや消耗品から使用したため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度はHDL粒子中に含まれるタンパク質や機能性脂質の測定系の立ち上げを実施する予定である。またすでにHDL機能関連で欧州動脈硬化学会と欧州心臓病学会での口演発表が決定しており、旅費も使用予定である。
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