研究課題
HDLの質としてマクロファージからのコレステロール引き抜き能および抗酸化能(ORAC法)を種々の臨床検体で測定し、動脈硬化等との関連を検討している。コレステロール引き抜き能は放射性コレステロールをJ774.1細胞に標識し、患者HDL分画を添加することで培地中に引き抜かれた放射性コレステロールをカウントする。抗酸化能は患者HDL分画に含まれる抗酸化物質によるラジカル吸収能を蛍光検出を用いて測定するORAC法を用いている。HDL分画の単離はポリエチレングリコール沈殿法を用いた。家族性高コレステロール血症患者334名における抗酸化能(ORAC値)はコレステロール引き抜き能と独立し、かつHDL-C値(量)よりも重要な心血管疾患の予測因子であることが明らかとなり、2016年8月の欧州心臓病学会、2017年3月の日本循環器学会で学会発表を実施した。現在論文を作成中である。吹田コホート研究における上記HDL機能と心血管イベントの解析も終了し、2017年8月に開催される欧州心臓病学会でその成果を発表予定、同時に論文作成予定である。一方、共同研究で実施した端野・壮瞥町コホート研究による解析で、コレステロール引き抜き能が一般住民の頚動脈硬化と負の関連を示すことをScientific Report誌に発表した。HDL機能を規定する分子の探索も同時に進めており、HDL分画中の総リン脂質がコレステロール引き抜き能をHDL-C値よりも強く予測することが判明したが、心血管疾患の予測因子としてはコレステロール引き抜き能がHDL中総リン脂質よりも強い因子であることが判明し、より詳細なリン脂質組成などの研究を進めている。本結果は2016年5月の欧州動脈硬化学会で発表した。研究計画書に記載した検体についてはすべてHDL機能の測定が終了しており、経過は極めて順調と考える。
2: おおむね順調に進展している
研究計画書に記載した検体についてはすべてHDL機能の測定が終了しており、経過は極めて順調と考える。HDL機能を規定するHDL粒子組成の解析も進めることができている。
吹田研究については解析も終了したため、今年度は論文作成を実施する。心筋梗塞患者二次予防に関する臨床研究についてもHDL機能測定は終了しており、解析を実施する。HDL機能を規定する因子を明らかにする研究では現在HDL粒子中に含まれるリン脂質組成や脂溶性ビタミンの測定も進行している。また新たなHDL機能として血管内皮細胞を用いたHDLの抗炎症作用を測定する実験系も立ち上げる予定である。
試薬や消耗品を交付前に購入していたものから使用したため。また研究補助員に対する人件費が平成29年度に変更になったため。
今年度はHDL機能を規定する因子を探索するための研究補助員に対する人件費を使用する。HDL機能に関する論文執筆や学会発表もすでに予定しており、英文校正費用や論文掲載料、学会旅費などにも使用する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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http://fh-ncvc.com/teach/hdl%E6%A9%9F%E8%83%BD%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E7%A0%94%E7%A9%B6/