研究課題
従来、哺乳類の成体心筋細胞は分裂しないと考えられてきたが、僅かにターンオーバー(新陳代謝)していることが実証され、その主な起源(細胞種)として、既存の心筋細胞の分裂が注目されている。臓器や器官の「適切な大きさ(増殖速度)」を決めるHippo-YAP経路が、心筋細胞の増殖にも関与するという報告があるが、その制御機構やHippo経路の最終的なエフェクター(転写補因子)であるYAPやTAZの標的因子は十分に検討されておらず、またその制御方法も不明である。本課題では、成体心筋細胞の増殖能を制御し得るシグナル伝達系としてHippo-YAP経路に着目し、これを制御する薬剤の創出を試みる。約20,000種類の未知化合物ライブラリーから、上皮細胞でのYAP, TAZ活性化を指標に1次スクリーニングを施行し、次に、ラット新生児心筋細胞の増殖能に与える効果について、DNA合成(EdU取り込み)、核分裂(pH3染色)、細胞質分裂(Aurora B染色)、細胞周期(Fucci indicator)を指標に2次スクリーニングを行った。最も活性が高かった化合物TAZ-12について、現在までに約20種類の側鎖・構造改変を実施し、生体内でも活性度が高い(分解されにくい)と考えられるフッ素化化合物TAZ-Kを創出した(増殖能も増幅)。インビトロの検討では、化合物TAZ-KはWnt経路活性化作用やNRF2酸化ストレス応答系の活性化にも関与していた。今後は、さらに詳細な作用機序の検証を行うと共に、マウス心筋梗塞モデルや拡張型心筋症モデルの心機能や心筋細胞の増殖能に与える影響を検証する予定である。
2: おおむね順調に進展している
Hippo-YAP/TAZ経路の活性化および心筋細胞の増殖能や細胞周期を指標にして、未知化合物(20,000種類)のスクリーニング作業を実施し、活性度が高く毒性も少ない化合物TAZ-12を選出できた。側鎖・構造変換の結果として、さらに効能が高いフッ素化化合物TAZ-Kの創出にも成功した。
RNA-seqによる網羅的な発現解析などで、さらに詳細な作用機序を解析するとともに、マウス心筋梗塞モデル心機能や心筋細胞の増殖能に与える影響を検証する予定である。
2017年3月使用を予定していた物品の納入が、2017年4月の納入となったために、若干の消耗品分の予算を繰越とした。
上記の物品の納入後(2017年4月)に使用する予定であり、全体の実験計画の遅延には繋がらない。
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