研究課題/領域番号 |
15K09135
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
薄井 荘一郎 金沢大学, 大学病院, 助教 (50507043)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 心不全 / マイクロアレイ / 肝臓 |
研究実績の概要 |
圧負荷による心不全モデルにおいて臓器連関(心肝連関)が存在し、インスリン抵抗性の破綻が心不全病態形成に連関するメカニズムを検証する。今年度は、野生型マウスに圧負荷モデルを作成した。マウスを麻酔後、人工呼吸器管理下に開胸し、実体顕微鏡下に横行胸部大動脈を結紮し圧負荷モデルを作成した。大動脈に圧較差が作成されていることを小動物用超音波検査器(VEVO2100-70MHz)にて確認した。大動脈結紮14日後で結紮前後の圧較差は平均40-50mmHgあることを確認した。野生型マウスに、大動脈結紮圧負荷モデルを作成し、時間経過を観察した。手術後 3日、7日、14日観察後、心臓、肺臓、肝臓などの臓器を摘出し臓器重量を測定した。心筋の肥大を反映する、心重量は、偽手術群と比較して、大動脈結紮7日後に有為に増加し、14日後も更なる増加が確認されてたが、7日目との有意差はなかった。うっ血を反映する、肺重量は、偽手術群と比較して、大動脈7日後に有意に増加し、14日後はさらに増加が認められた。7日目と比較して14日後の肺重量は有意に増大していた。これらの検討から、大動脈結紮7日後では、圧負荷により心筋肥大が形成され、14日後では、肥大による適応が破たんし、圧過負荷により心不全が誘導されているモデルと考えられた。右心系のうっ血を反映する肝重量は、いずれの群でも差は認められず、大動脈結紮により誘導される心不全は主に、左心不全と考えられた。 心不全状態が形成された、14日後の肝臓よりmRNAを抽出し、偽手術群(n=3)と大動脈結紮群(n=3)でcDNAマイクロアレイを行った。25467の遺伝子が同定され、圧負荷の有無をP=0.001で識別できる遺伝子が、1273同定することができた。今後、これらの遺伝子の機能を解析を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
野生型マウスに圧負荷を作成し、モデルが適当であることが確認できた。さらに、心臓に圧負荷を作成したモデルの肝臓ににおいて、偽手術モデルと比較して、mRNAプロファイリングが大きく異なっていることが分かった。圧負荷誘導性心不全状態において、心臓ー肝臓連関が存在することを示唆するデーターが得られた。
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今後の研究の推進方策 |
圧負荷により誘導されるmRNA遺伝子変化の詳細を、metacoreやBRB-aray toolを用いて解析するとともに、ヘパトカインとして注目しているセレノポロテインPの発現も評価する。また、セレノプロテインP遺伝子欠損マウスに圧負荷誘導性心不全を作成し、心不全状態形成および生存に与える影響を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
効率的な執行により端数が生じ未使用額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
セレノプロテイン遺伝子欠損が圧負荷による心臓リモデリングに与える影響、生存率に与える影響を確定したのち、そのメカニズムの解析をおこなう。SeP遺伝子欠損が与える影響を同定するため、ウエスタン法やリアルタイムPCR法および免疫組織染色などを用い、既存のマーカを評価する。また、その成果を国際学会等で発表し、広く研究者の意見をえられるようにする。
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