研究課題
圧負荷による心不全モデルにおいて臓器連関(心肝連関)が存在し、インスリン抵抗性の破綻が心不全病態形成に連関するメカニズムを検証する。昨年度までの検討で、圧負荷心不全モデルにおいて、心肝連関存在することを同定できた。今年度は、全身のインスリン抵抗性の形成に関与する肝分泌タンパクであるセレノプロテインP(SeP)に注目し検討を進めた。まず、野生型マウスに圧負荷モデルを作成し、心不全状態が形成された、14日後の心臓、肝臓よりmRNAを抽出し、偽手術群と大動脈結紮群でRT-PCR法にてSeP mRNA発現を検討した。心臓でのSePの発現は、定常状態でその発現は同定できるが、圧負荷による発現変化は確認できなかった。一方、肝臓でのSeP発現は、心臓での圧負荷(心不全)により上昇することを確認した。そこで内因性のSePが心不全病態形成における役割を検討するために、SeP遺伝子欠損マウスを用いた。SeP遺伝子欠損マウスとその同腹の野生マウスに大動脈縮窄による圧負荷誘導性心不全モデルを作成した。術後14日目の検討で、心臓、肺臓、肝臓を摘出し臓器重量を確認した。心肥大を反映する心重量は、偽手術群と比較して、大動脈縮窄により、SeP遺伝子欠損マウスおよび野生マウスのいずれにおいても有意に増大していたが、大動脈縮窄による心重量は、SeP遺伝子欠損マウスにおいて野生マウスと比較すると有意に抑制されていた。さらに、左心不全によるうっ血を反映する肺重量は、偽手術群と比較して、大動脈縮窄により、SeP遺伝子欠損マウスおよび野生マウスのいずれにおいても有意に増大していたが、大動脈縮窄による肺重量は、SeP遺伝子欠損マウスにおいて野生マウスと比較すると有意に抑制されていた。これらの結果から、SeP遺伝子欠損マウスでは、圧負荷により誘導される心不全形成、心臓リモデリングが抑制されていることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
心不全の病態形成に、肝臓由来の分泌タンパクSePが関与している可能性を遺伝子欠損マウスに圧負荷誘導性心不全モデルを用いて検討し、その作用を確認できた。
SePがどのように作用し、心不全状態を形成するかを明らかにする。SeP遺伝子欠損マウスと野生マウスの心臓の検討(mRNA、ウエスタンブロット、免疫組織染色)をすすめ、心臓における、線維化、心筋アポトーシス、血管新生に及ぼす効果を明らかにするとともにそのメカニズムを検討する。また、その成果を国際学会等で発表し、広く研究者の意見をえられるようにする。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
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