研究課題/領域番号 |
15K09137
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
木下 秀之 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (30467477)
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研究分担者 |
桑原 宏一郎 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (30402887)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 肺動脈性肺高血圧症 / 肺血管リモデリング / 受容体活性化型Ca2+チャネル |
研究実績の概要 |
最近の治療法の進歩にもかかわらず、肺動脈性肺高血圧症は依然難治性の疾患であり、肺高血圧症進行の分子機序解明に基づく新規治療法開発が求められている。近年肺動脈性肺高血圧症患者の肺動脈平滑筋細胞にて、受容体活性化型Ca2+チャネルであるTRPC3/6の発現亢進が報告され、肺動脈性肺高血圧症の発症・進行におけるTRPC3/6の役割に注目が集まっている。今回我々は、TRPC3/6阻害による肺動脈性肺高血圧症抑制 効果の検討を行った。 【結果】C57BL6/JマウスにMonocrotaline Pyrrole (MCTp)投与を行ったところ、肺におけるTRPC6の遺伝子発現の亢進を認め、肺動脈圧の上昇、右室肥大を認めた。TRPC阻害薬や、生体内にてTRPC3/6複合体の活性を抑制することが報告されている選択的TRPC3阻害薬であるPyr3、TRPC3/6/7を阻害するPyr4は、MCTp投与マウスの右室収縮期圧や右室重量の増加を有意に抑制した。さらに、Monocrotaline誘発性肺高血 圧モデルラットにおいても同様の検討を行った。肺高血圧モデルラットにて認められる、心エコーでの左室扁平化やTr-PGの亢進、右室重量の増加を、Pyr3, Pyr4は抑制した。さらにPyr4, Pyr4は上記肺高血圧モデルラットの生存率も改善した。さらにTRPC3/6阻害による肺動脈性肺高血圧症抑制効果の検討のために、遺伝的にTRPC3, TRPC6を欠失させたマウスに対しMCTpを投与し検討を行った。TRPC3/6 double knock-outマウスにおいてMCTp投与による右室収縮期圧の増加、右室重量の増加が有意に抑制されている結果であった。 【結論】TRPC3/6阻害が肺動脈性肺高血圧症に対する新たな治療法となる可能性が示唆さ れた
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在の所、肺高血圧モデル動物に対して、複数のTRPC3/6阻害作用を有する薬剤だけで無く、遺伝的なTRPC3/6の欠失によっても肺高血圧症の進展抑制を認める結果が得られており、当初の予想に合致した結果であると考えられる。ただし、TRPC3単独もしくはTRPC6単独の遺伝的欠失による肺高血圧症の効果に関しては、現在までの検討ではまだ結果が出ていない。さらにTRPC3/6阻害作用の下流のシグナルついての検討が現時点では不明で有り、今後引き続き検討を要する。
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今後の研究の推進方策 |
肺高血圧モデル動物に対して、TRPC3/6阻害が肺高血圧症の進展抑制を認める結果が得られている。ただし、TRPC3単独もしくはTRPC6単独の遺伝的欠失による肺高血圧症に対する効果に関しては、現在までの検討ではまだ結果が出ておらず、TRPC3, TRPC6の肺高血圧症の発症進展における役割や重要性の違いについては以前不明である。さらに今回作成した肺高血圧モデルにおける組織所見や、タンパク発現、遺伝子解析等を行い、今後肺高血圧症の発症進展に関与するTRPC3/6に関する下流のシグナルついての検討を引き続き行う方針である。
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