研究課題
肺動脈性肺高血圧症に対する、分子機序解明に基づく新規治療法開発が求められている。今回我々は受容体活性化型Ca2+チャネルであるTRPC3/6阻害による肺動脈性肺高血圧症抑制効果の検討を行った。【結果】昨年度のマウスにおける検討に引き続き、今年度はモノクロタリン(MCT)誘発肺高血圧モデルラットを用いて、TRPC3/TRPC6/TRPC7阻害薬であるPyrazole 4(Pyr4)及びTRP C3の選択的阻害薬であるPyrazole 3(Pyr3)の肺高血圧症に対する効果を検討した。MCT誘発肺高血圧モデルラットでみられた右室/左室+心室中隔重量比の増大、肺動脈圧の上昇、肺動脈での中膜肥厚をPyr4及びPyr3は有意に抑制し、生存期間の改善も認めた。さらに下流シグナルの探索にて、calcineurin-NFAT経路の下流であるRCAN1のmRNA発現を検討したところ、MCT誘発肺高血圧モデルラットで上昇しているRCAN1の発現が、Pyr4、Pyr3投与により抑制された。次にPyr4、Pyr3の効果を遺伝子的に再現するため、TRPC3ノックアウトマウス(TRPC3 KO)、TRPC6 ノックアウトマウス(TRPC6 KO)、TRP C3/TRP C6ダブルノックアウトマウス(TRPC3/C6 dKO)を用いて肺高血圧モデルを作成した。野生型マウス(WT)においてMCTpを投与すると、肺動脈圧の上昇、右室肥大、肺動脈での中膜肥厚を認めたが、MCTp を投与したTRPC3 KO、TRPC6 KO、TRPC3/C6 dKO群では上記反応が軽減していた。【結論】TRPC3/6阻害が肺動脈性肺高血圧症に対する新たな治療法となる可能性が示唆された。
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Pulmonary Circulation
巻: - ページ: -
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