研究課題
野生型ならびに糖鎖付着部位のアミノ酸Thr, SerをAlaに置き換えた種々の変異体ヒトproBNP遺伝子をラット心筋細胞にレンチウイルスを用いて遺伝子導入し、その培養上清を我々の最近開発したproBNP、total BNP(=proBNP+BNP32)を正確に0.4pMレベルまで測れる測定系で測定し、proBNP/total BNP ratioを算出、糖鎖付着部位のプロセシングに対する効果を正確に評価した。野生型proBNPを導入した時のproBNP/total BNP ratioは約40%であった。ウイルスのタイターでかなり培養上清のproBNP、total BNP濃度は変わるが、濃度にかかわらずproBNP/total BNP ratioは約40%とほぼ一定であった。proBNPの切断部位に最も近いTh71をAla71に変えると、proBNP/total BNP ratioは約20%とプロセシングは増加した。そこで切断部位から最も近傍の糖鎖付着部位までの距離がプロセシングを決定するとの仮説をたて、Th71をTh69、Th67とずらしていくと、プロセシングは少しずつだが有意に増加した。すなわち、切断部位から最も近傍の糖鎖付着部位までの距離がプロセシングを決定することが示唆された。また糖鎖付着部位全てをAlaで置換するとproBNP/total BNP ratioは約3%~とほとんどがプロセシングされた。すなわち、糖鎖の付着がプロセシングに関与している事が明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
達成度はまず良好である。過去の報告ではHEK293ではTh71が殆どプロセシングを決定しているといわれていたが、心筋細胞ではTh71は40%中の約半分を決定している事が判明し、Th71以外の所の重要性も示唆され、今後の研究に道筋を示した。また。また糖鎖付着がプロセシングに極めて大事である事も示唆された。特に切断部位と最初の糖鎖付着部位までの距離の重要性が示唆された。また我々のプロセシングの評価系は再現性も高く、極めて安定しており、この研究に適したモデルである事も判明した。今後もこの系を用いて、proBNPのプロセシングの全貌を明らかにしていきたい。臨床的検討もあわせて行っていく予定である。予備的検討では重症心不全ではproBNP/total BNP比率はcoronary sinusで増えており、我々の仮説「心不全が悪化するとproBNPはプロセシングされにくくなる」という事実と矛盾しないものであった。
proBNPの心筋細胞におけるプロセシングではTh71が40%中の約半分を決定している事が判明し、Th71以外の所の重要性も示唆され、今後の研究に道筋を示した。今後は1本鎖の変異型proBNPを作成し、しらみつぶしに7本全部の意義を調べていきたい。予備実験で、大事な部位が示唆されており、今後確認していきたい。また糖鎖付着の組み合わせも考えていきたい。さらにO型糖鎖を転移する酵素についてもsiRNA法などを用いて検討していく予定である。予備実験で、GALNTファミリーで幾つかの候補に絞り込んでいる。心不全で増加する神経体液性因子とproBNPのプロセシングに与える影響も検討予定である。また臨床例でも採血を行い、proBNP/total BNP ratioの高い症例、低い症例、心不全との関係などを検討課題としたい。予備的検討ではある種の不整脈はproBNP/total BNPは低いことが示唆されており、今後確認していきたい。
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