研究課題
これまでの研究において、オートファジーと呼ばれる細胞内分解機構が心筋細胞内ミトコンドリアの形態維持および逆リモデリングに関わることを明らかにしてきた。種々の治療によって惹起される心臓逆リモデリングに関する分子機構について、ミトコンドリア形態変化に着目した研究を行った。本年度は逆リモデリングに関する機構解析を行うためのモデル樹立を行った。まずin vivoの評価系として、アンジオテンシンII持続投与後の心肥大退縮モデルならびに横行大動脈縮窄圧負荷心肥大手術後の圧負荷解除による心肥大退縮モデルを作成し、いずれにおいても心臓逆リモデリングが評価可能であることを確認し、モデル樹立に成功した。続いてin vitroの系としてフェニレフリン刺激による心筋細胞肥大後の、刺激除去による心筋細胞肥大退縮を評価するための適切な条件設定を実施し、評価系を確立した。また遺伝子改変マウスとして、オートファジー抑制因子であるRubiconの心筋細胞特異的欠損マウスを作成した。さらに心筋細胞特異的にミトコンドリア融合分裂に介入可能な遺伝子改変マウスの作出を行った。同時に、ミトコンドリア分解機構に関わる新規分子機構の解析を行い、酵母において見いだされたマイトファジー必須因子であるAtg32の機能的ホモログとしてBCL2L13を同定した。BCL2L13はミトコンドリア外膜上に発現しており、ミトコンドリアの分裂を誘導すると共に、マイトファジーレセプターとして機能することを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
心臓逆リモデリングを評価するために必要とされるin vivoならびにin vitroの系をそれぞれ樹立に成功しているとともに、遺伝子改変マウスの作出については予定よりも順調に進行している。しかしながらin vitroの評価系樹立開始が遅れたため、逆リモデリングにおける分子機構の網羅的解析の開始が遅れている。しかしながらマウスを用いる実験が予定よりも順調に進んでいることから、全体としてはおおむね順調に進展していると判断される。
上記の通り、逆リモデリングのin vitroに関する実験にやや遅れが認められるが、遺伝子改変マウスを用いた研究遂行が予定よりも順調であることから、今後の全体の研究進行は順調であると考えられる。今後は本年度に確立した評価系を用い、ミトコンドリアダイナミクスが心臓逆リモデリングにおよぼす影響の検討を実施すると共に、逆リモデリングに関わる分子機構の探索を実施する。
心臓逆リモデリングに関わる分子機構の探索のために、siRNA購入を本年度中に行う予定であったが、本実験に用いる心臓逆リモデリングのin vitro評価系の確立に時間を要したため、種々のsiRNA購入が予定よりも遅れたためである。しかしながら心臓逆リモデリングのin vivo評価系の確立や、ミトコンドリア形態介入のための遺伝子改変マウスの作成やRubicon心筋特異的欠損マウスの作成評価は予定よりも順調に進んでおり、全体としての研究推進ならびに遂行には特に問題はないと考えられる。
siRNA購入、ならびにsiRNAを用いたin vitro実験に用いる試薬や器具類購入に充てる予定であり、次年度の中で使用するものである。さらに予定よりも順調に進行しているin vivo実験や、マウスの維持管理費に充当することで研究計画の達成に用いる。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件)
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