研究課題
背景:筋小胞体膜上に存在するCa2+放出チャネルであるリアノジン受容体(RyR)からの拡張期Ca2+漏出は、収縮・拡張不全や致死的不整脈の機序として重要である。我々は、これまで、収縮不全において悪性高熱症の治療薬であるダントロレンが、RyRからの拡張期Ca2+漏出を抑制し、収縮不全を改善させることを報告してきた。しかしながら、拡張不全に対するダントロレンの効果に関しては、いまだ、明らかではない。そこで、本研究では、1.高血圧による収縮期後期圧負荷が、RyRから拡張期Ca2+漏出を誘発し、心筋細胞の弛緩能障害をもたらすかどうか 2.ダントロレンが、この圧負荷によるCa2+漏出を抑制し、心筋細胞の弛緩能を改善させるかどうかを検討した。方法:培養ディッシュ中の心筋細胞をペーシングし、自由に圧負荷様式(収縮期圧のピークや収縮期圧のピークのタイミング)を変えられる圧負荷システムを独自に開発した。WTマウスより心筋細胞を単離培養し、上記システムを用いて、培養心筋細胞に収縮期,拡張期に圧負荷を行い、Ca2+transient/spark, Cell shorteningを計測し、圧負荷に対する細胞機能への影響を評価した。結果:収縮後期の圧負荷でのみで拡張期Ca2+sparkの増加やCa2+transient波形の下降速度の低下、Cell shorteningで弛緩能の障害が圧依存性に出現した。拡張期の圧負荷では変化を認めなかった。また、ダントロレン投与下で収縮期に圧負荷を行うとCa2+transient/spark, Cell shorteningはともに有意に改善した。結論:収縮期の圧負荷は拡張期Ca漏出を誘発し左室弛緩障害の原因となる。ダントロレンは圧負荷依存性の拡張期Ca漏出を抑制することにより弛緩障害を改善させるため、新たな拡張不全の治療薬としての可能性が示唆された。
3: やや遅れている
心不全・致死的不整脈に対するダントロレンの臨床試験に関しては、平成27年度から開始予定であったが、多施設ランダム化介入試験であるため、プロトコールの作成、保険加入、IRB承認に時間がかかり、平成28年度から、開始予定である。
実験に関しては、順調に進行している。ダントロレンの多施設臨床試験に関しては、平成28年度よりまず、大学病院から、開始する予定である。
ダントロレンの多施設臨床研究が平成27年度に開始できなかったため。
ダントロレンの多施設臨床研究を平成28年度から開始予定であるため、平成27年度、ダントリウム購入用に計上していた使用額を平成28年度に使用する予定である。
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