研究課題
申請者らは、高血圧により、左室後負荷が増大したとき、左室弛緩障害が生じることや左室収縮期負荷様式の違いにより、左室肥大の様式も異なることを報告してきた(Am J Physiol.1994;267:H148-54. Circulation. 1996;94:3362-8.)。これらの知見から、高血圧による収縮期の左室圧負荷が、リアノジン受容体から、拡張期Ca2+リークを引き起こし、弛緩障害を招く。さらに、この拡張期Ca2+過負荷が、心筋細胞肥大を助長し、拡張不全による心不全を増悪させるという仮説を立てた。この仮説を証明するために、申請者らは、マウス横行大動脈縮窄(TAC)モデルを作成し、TAC2週、4週、8週後に心エコーおよび単離心筋細胞で,cell size、cell shortening(CS)、Ca2+ sparkを測定した。TAC4週後、8週後には、心エコ-(Fractional shortening)、CS(%CS)による心筋・心筋細胞収縮能はSham群に比較して有意に低下した。一方、TAC2週後には、Fractional shorteningや%CSの低下は認めなかったが、心筋細胞拡張能の指標であるtime to 70% declineはShamに比較して有意に延長しており、弛緩能が収縮能に先行して障害されていることが示唆された。また、TAC2週後には、cell sizeが有意に増大しており、心筋細胞肥大が生じていた。TAC2週後には、TAC群では、すでに、拡張期Ca2+ sparkが出現しており、圧負荷により、肥大代償期からカルシウムハンドリング異常が出現することが示唆された。興味深いことに、マウスTACモデルに、ダントロレン(20mg/kg, i.p.)投与を行うと、TAC2週後の拡張期Ca2+ sparkは、改善し、心筋細胞肥大、弛緩障害は明らかに改善した。
3: やや遅れている
心不全・致死的不整脈に対する臨床試験に関しては、多施設ランダム化2重盲検試験(ダントロレン群150例、偽薬分150例)にバージョンアップした。プロトコール作成、保険加入、IRB承認、実薬、偽薬の発注、製造に時間がかかり、平成29年9月から開始予定である。
基礎研究に関しては、Ca2+放出チャネルであるリアノジン受容体を分子標的として不全心筋細胞内Ca2+ハンドリング調節異常を是正し、拡張不全に対する新しい治療法の確立を目指すものである。今後、TACモデルを用い、ダントロレン投与群で生存率が改善するかどうかを検討する。多施設ランダム化2重盲検試験(ダントロレン群150例、偽薬分150例)に関しては、期間内に臨床試験が終了できるよう、多施設と密に連携をとって試験を遂行する。
上記臨床試験にかかる費用(薬剤製造費、保険加入等の経費など)に、次年度使用額を充てる予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 図書 (1件)
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