研究課題/領域番号 |
15K09146
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
高橋 将文 自治医科大学, 医学部, 教授 (40296108)
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研究分担者 |
臼井 文武 自治医科大学, 医学部, 助教 (50585560) [辞退]
唐澤 直義 自治医科大学, 医学部, 助教 (60631893)
木村 博昭 自治医科大学, 医学部, 講師 (70593622)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | サイトカイン / 炎症反応 / 心血管病 / タンパク質修飾 |
研究実績の概要 |
心血管病におけるインフラマソームの役割を明らかにするため、インフラマソーム構成分子(NLRP3・ASC・カスパーゼ-1)欠損マウスに、腹部大動脈瘤やドキソルビシンによる心不全、妊娠高血圧症モデルを作製して解析した。特に、腹部大動脈瘤では、大動脈外膜へと浸潤するマクロファージにおいてミトコンドリア由来酸化ストレスによってNLRP3インフラマソームの活性化が引き起こされ、血管炎症から血管壁の脆弱性が誘導されることを明らかにした。また、インフラマソーム制御機構の解明として、内因性インフラマソーム制御分子であるCARD16とCARD17の解析を行い、CARDドメインを介した新たなインフラマソーム活性化の制御機構について報告した。さらに、申請者らが最近、同定した新規のNLRP3インフラマソーム結合分子Aの解析を進め、分子AがNLRP3に結合してユビキチンE3リガーゼとして機能すること、分子A欠損細胞ではインフラマソーム活性化が亢進し、逆に分子Aの強制発現細胞ではその活性化が抑制されることを見出したことから、分子Aがインフラマソームの活性化を負に制御していることが明らかになった。 今後、さらに詳細な機序を検討することにより、インフラマソーム制御機構の解明とこれを標的とした新たな治療法の開発が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
心血管病をはじめとするいくつかの病態モデルを用いて、NLRP3インフラマソームの役割を解析して報告した。また、インフラマソーム活性化の分子機構についても、CARDドメインを介した新たなインフラマソーム活性化の制御機構について報告するとともに、申請者らが新たに同定したNLRP3結合分子Aの解析を行った。具体的には、NLRP3変異体および分子Aの変異体の作製によるそれぞれの結合部位の同定、リジン変異体を用いたユビキチン修飾部位の同定、分子Aの欠損・強発現によるインフラマソーム活性化の解析等を検討した。一方、組織特異的にインフラマソーム構成分子を欠損するマウスおよびインフラマソーム構成分子の時間的制御マウスの作製にも成功しており、 今後、これらのマウスを用いて病態モデルを作製し、解析を遂行していく。以上のことから、本研究課題に関しては、おおむね順調に進捗しており、当初の研究計画も達成している状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
組織特異的にインフラマソーム構成分子を欠損するマウスに関しては、すでにマクロファージおよび線維芽細胞におけるいくつかの欠損マウスの作製に成功しており、今後、病態モデルを作製して解析していく予定である。一方、インフラマソーム構成分子の時間的制御マウスについては、ドキシサイクリン投与による構成分子欠損の経時的な変化を確認した上で、病態モデルを作製して解析を行う。また、レンチウイルスベクターと骨髄移植を利用した骨髄由来の炎症細胞で構成分子を欠損させるマウスの作製を行う。これらの研究を進めるとともに、新たに同定したユビキチンリガーゼ分子Aによるインフラマソーム制御機構の解析を継続して行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究を遂行中に遺伝子欠損マウスの供給が追いつかず、一時的に研究が中断していた。 そのためその期間中に使用予定であった試薬、抗体等の購入費として次年度に繰り越す。
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次年度使用額の使用計画 |
モデル作成に必要な試薬、FACS解析で使用する抗体および炎症性サイトカイン測定キット(ELISA、CBA)を購入する予定である。
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