研究課題
インフラマソームは強力な炎症性サイトカインであるIL-1β産生を制御する自然炎症経路の一つであり、心血管病の病態に共通する無菌性炎症の惹起に寄与する細胞内分子複合体である。申請者はこれまで、心血管病におけるインフラマソームの重要性を報告し、その制御機構の解明が新たな治療法の開発に繋がることを明らかにしてきた。今年度は、脂肪酸による炎症惹起機構を解析し、飽和脂肪酸が過剰になるとマクロファージの細胞質内に結晶を形成し、リソソーム傷害を介したインフラマソーム活性化が引き起こされることを見出した。この結晶形成およびインフラマソーム活性化は、不飽和脂肪酸によって阻害されたことから、飽和・不飽和脂肪酸の不均衡がこの反応を制御していることが明らかになった。一方、好中球由来のプロテアーゼが、インフラマソーム非依存性にマクロファージ由来のIL-1β前駆体をプロセシングして炎症惹起や組織傷害に寄与していることを、肝虚血再灌流モデルを用いて明らかにすることができた。また、インフラマソームの構成分子であるNLRP3に直接結合する新規RBR型E3ユビキチンリガーゼであるARIH2を同定し、ARIH2がインフラマソーム活性を負に制御することを報告した。このARIH2はNLRP3のNACHTドメインに結合し、ARIH2のRING2ドメインを介してユビキチン化することもわかった。さらに、ARIH2はユビキチン鎖のK48/K63を介してNLRP3インフラマソームの活性化を制御していることも明らかにした。ARIH2欠損マウスは胎生致死であることから、現在、ARIH2のコンディショナル遺伝子改変マウスを作製しており、今後、生体や病態モデルにおけるARIH2を介した炎症制御機構の解明とこれを標的とした新規治療法の開発が期待される。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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