研究課題
慢性心不全患者にはしばしば貧血・好中球の増加・リンパ球の減少を合併し、それは予後不良のサインとなる。これらの骨髄異常の発症機序を明らかにするために、食塩負荷により貧血と好中球増加・リンパ球減少を伴う慢性心不全を発症するDahl食塩感受性高血圧(DS)ラットの血球異常の機序を解明するために実験を行った。平成29年度はDSラットの貧血に対するエリスロポエチン(Epo)や鉄剤の治療効果を検討した。DSラットでは、赤血球の破壊が亢進しており、内因性のEpoがむしろ増加していることから、Epoの効果が低いことが予想されたが、実際にEpoは全く効果がなかった。また血清鉄が低下していることから鉄剤が少しは有効であることが期待されたが、全く無効であった。さらに好中球の増加・リンパ球の減少の機序を明らかにするために、アデニン負荷腎障害モデルマウスを使用した。ラットによる実験では、血球表面マーカーが少なく十分な解析ができなかったためである。アデニン負荷腎障害モデルマウスでは腎機能が障害され、末梢血の好中球が増加しリンパ球が減少した。そして腎障害マウスでは骨髄細胞中のmyeroid progenitorが増加し、common lymphoid progenitorが減少した。さらに血中の尿毒症物質インドキシル硫酸を測定したところ、腎障害マウスでは血中インドキシル硫酸が上昇しており、球形活性炭AST-120を投与したところ、血中インドキシル硫酸は低下し、末梢血中の好中球増加・リンパ球減少も改善した。この結果は慢性心不全における好中球増加・リンパ球に腎機能の低下が関与していることを強く示唆するものであった。
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Heart and Vessels
巻: 32 ページ: 1410~1414
10.1007/s00380-017-1013-4