研究課題/領域番号 |
15K09149
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
白井 学 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 創薬オミックス解析センター, 室長 (70294121)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | ポリコーム遺伝子 / 心筋細胞 / 恒常性維持 |
研究実績の概要 |
目的:ポリコーム(PcG)遺伝子Pcgf5のノックアウトマウスの解析を元に、成熟心筋細胞の恒常性維持を制御する分子機構解明を目指し、更に、様々なストレスによるこの分子機構の破綻がヒトにおける心疾患を生じさせ、PcG遺伝子群がその原因遺伝子である可能性について探索する 。 研究実績: 1. Pcgf5タンパク質標的遺伝子の探索:Pcgf5タンパク質標的遺伝子を探索するために、12ヶ月齢の野生型マウス、Pcgf5遺伝子KOマウス左心室からtotal RNAを抽出し、RNA-seq法を用いた遺伝子発現解析を行った。 2. Pcgf5タンパク質と複合体を形成するタンパク質の同定:共免疫沈降法を用いて、マウス左心室でPcgf5タンパク質と複合体を形成するタンパク質を解析したところ、Casein kinase 2α1(CK2α1)、Histone deacetylase 2(HDAC2)と複合体を形成していることを新たに見出した。 3. Pcgf5遺伝子KOマウス心臓における、タンパク質リン酸化状態の解析:Pcgf5タンパク質がマウス左心室でCK2α1と複合体を形成していることから、Pcgf5遺伝子KOマウス心臓でタンパク質のリン酸化状態が変化している可能性が見出された。12週令、12ヶ月令のマウス左心室を用いて、リン酸プロテオミック解析を行い、タンパク質のリン酸状態を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ChIP-seqは、使用する抗体の選定に時間がかかったが、決定したので次年度に行う。Pcgf5タンパク質と複合体を形成するタンパク質としてCasein kinase 2α1が確認されたため、リン酸化プロテオミック解析を優先して行った。また、Pcgf5タンパク質の標的遺伝子を探索するためにRNA-seqを行い、現在、詳細な解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
1.次世代シークエンサーを用いた、Pcgf5タンパク質標的遺伝子の探索:ヒストンの修飾状態に対する抗体を用いて、Pcgf5遺伝子KOマウス及び野生型マウス心臓から抽出したDNA断片をChIP-seqにより大量解析し、ヒストン修飾状態を網羅的に解析する。 また、Pcgf5タンパク質に対する特異的抗体を手に入れることができたため、Pcgf5タンパク質が結合するDNA断片を抽出し、同様にChIP-seq法により、標的遺伝子を探索する。Pcgf5遺伝子KOマウスの心臓においてヒストン修飾状態が変化していた領域、Pcgf5タンパク質結合遺伝子について、遺伝子の発現、タンパク質量がどのように変化しているか、qPCR法、Western blotting法、免疫組織学法に より解析する。RNA-seq法を用いて得られたPcgf5遺伝子KOマウス心臓において発現量の変化した遺伝子とChIP-seq法により得られたヒストン修飾状態が変化していた遺伝子、Pcgf5タンパク質結合遺伝子を比較し、Pcgf5タンパク質の標的遺伝子を特定する。 2.成熟心筋細胞へのストレスに対する恒常性維持機構における、Pcgf5及びその標的遺伝子の機能解析:前年度に引き続き、薬剤投与、横行大動脈縮窄術(TAC)により心臓へのストレス負荷を行い、ヒストン修飾の状態をWestern blotting法を用いて解析するとともに、Pcgf5遺伝子KOマウス心臓で発現量の変化が見られた遺伝子について、ストレス負荷時により大きな変化が見られるかどうか解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
高額の費用がかかるChIP-seqに使用する抗体の選定に時間がかかり、本年度はChIP-seqを行っていない。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度に行う予定であった、ChIP-seqを行う。この解析に利用する試薬、キットの購入に使用する。
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