目的:ポリコーム(PcG)遺伝子Pcgf5のKOマウス解析を元に、成熟心筋細胞の恒常性維持を制御する分子機構解明を目指し、様々なストレスによるこの分子機構の破綻がヒトにおける心疾患を生じさせ、PcG遺伝子群がその原因遺伝子である可能性について探索する 。 Pcgf5遺伝子KO(Pcgf5 KO)マウスの解析:Pcgf5 KOマウスの多くは、生後約1年で心不全を伴って死亡する。詳細な機能解析を行った結果、生後12週令で心機能のわずかな低下が確認され、老化に伴った症状の増悪が確認された。また、Pcgf5 FloxマウスとNkx2-5/Creマウスを交配して心臓特異的なPcgf5 KOマウスを作成し、心機能低下が同様に生じることを確認した。 Pcgf5タンパク質標的遺伝子の探索:Pcgf5タンパク質標的遺伝子を探索するために、12週令、12ヶ月令の野生型、Pcgf5 KOマウス左心室における詳細な遺伝子発現解析をRNA-seq法を用いて行ったところ、心筋症で発現が上昇するNppaやMyh7、炎症性時に変化する遺伝子の発現上昇が12ヶ月令で確認されたが、筋肉の収縮、リラックスに関連した遺伝子に発現変動は確認されなかった。 Pcgf5タンパク質と複合体を形成するタンパク質の同定:共免疫沈降法を用いて、マウス左心室でPcgf5タンパク質と複合体を形成するタンパク質を解析したところ、Casein kinase 2α1(CK2α1)、Histone deacetylase 2(HDAC2)と複合体を形成していることを新たに見出した。 成熟心筋細胞へのストレスに対するPcgf5及びその標的遺伝子の機能解析:12週令のPcgf5 KOマウスに対して、浸透圧ポンプを用いて、イソプロテレノールを連続投与し、心臓にストレスを与えたが野生型、ホモ個体間で心機能に大きな差は確認されなかった。
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