研究実績の概要 |
目的:Mitochondrial inhibitory factor peptide 1 (IF1) が心血管作動性coupling factor 6のapoptosis作用と老化作用を阻害し、内因性の阻害物質である可能性を検討することである。方法・結果:1. 抗apoptosis作用:C末端側にGFPをコードしたIF1発現ベクターを作製し、HEK-293細胞に過剰発現した。24時間後にミトコンドリア膜が、48-72時間後には細胞膜が発色し、培養上清exosome画分にIF1を検出した。また、CF6 10-7M添加による培養上清のATP減少は消失し、細胞内pHの減少 (BCECF) は阻害された。HEK-293細胞のapoptosisはCF6により4.5±1.2 % から 6.4±1.3 %に増加 (Annexin V-PI法, p<0.05)、Aktのリン酸化は抑制 (52±13 %, p<0.05) されたが、IF1の過剰発現により消失した。2. Epigenetic 作用:CF6過剰発現マウスから採取した線維芽細胞 (TG)ではheterochromatinの消失と老化ヒストン修飾 (H3K4トリメチル化、H4K20トリメチル化、H4K5アセチル化) が認められた。IF1過剰発現によりheterochromatinは回復しヒストン修飾は消失した。3. Autophagy作用: TG細胞ではLC3IIが核内で強く細胞質でびまん性に弱く染色され、隔離膜形成に重要なAtg7の発現低下と、ChIP assayによるAtg7 promoter (-440 ~ -763, repressor 結合部位) の老化ヒストン修飾が認められた。IF1の過剰発現により、いずれも回復した。4. Telomere作用:TG細胞のtelomere長 (PCR法) は野生型マウスの線維芽細胞に比し短縮していたが、IF1の過剰発現により差は消失した。5. Genomic instability作用:TG細胞では核膜ラミナ蛋白emerinの減少が認められたが、IF1の過剰発現により差は消失した。結論:IF1はCF6による細胞内proton増加を抑制し、抗老化作用を有する可能性が示された。
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