研究課題/領域番号 |
15K09152
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
小和瀬 桂子 群馬大学, 大学院医学系研究科, 講師 (50594264)
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研究分担者 |
倉林 正彦 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (00215047)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 肺高血圧 / 血管平滑筋 |
研究実績の概要 |
肺動脈高血圧症(PAH)の病態には、transforming growth factor (TGF)-betaとbone morphogenic protein 2 (BMP2)シグナルの不均衡という説が有力である。また、近年、osteoprotegerine (OPG)が血管病変形成に関与することが示されており、PAHにおいては、OPGが肺動脈リモデリングを促進させることなどが報告されている。本研究は、血管平滑筋の分化誘導の調節異常との観点から、PAHの発症や進展におけるユビキチン様修飾(SUMO)や、SUMO化E3リガーゼのprotein inhibitor of activated STAT 1 (PIAS1)の病理生理学的意義を解明することを目的とした。 今回、私達は、低酸素刺激に加え、VEGF受容体抗体を腹腔内投与することにより、ヒト肺高血圧の病態に近いマウスモデルを作製した。このモデルマウスを用い、肺組織における平滑筋分化マーカーと、TGFbetaRII、Notch1、OPG、SUMO1の発現を、主に免疫組織染色法を用いて検討した。その結果、OPGの発現はSMalpha-actinの発現部位と一致せず、気道上皮細胞に強く認められた。興味深いことに、SUMO1発現も平滑筋分化マーカーの発現部位と異なり、OPGと同一の気道上皮細胞に強く認められた。 さらに、ヒトOPGプロモーター・レポーターコンストラクトを作製し、ルシフェラーゼアッセイを行ったところ、OPGプロモーターは、NotchシグナルであるRBP-J-kappaやPIAS family、SRFにより著明に活性化された。また、siRNAを用いて内因性PIAS1発現をknockdown することにより、OPGの発現が抑制されることも示した。さらに、PIAS1とubc9のアデノウイスルベクターを作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アデノウイルスベクターを作製する際に、293細胞の発育が不良であったりしたために、時間を要した。 また、市販のPIAS1抗体は非特異的に反応してしまうため、使用することが出来なかった。そのため、PIAS1の抗体作成を試みたが、PIAS1に特異的な適切な抗体の作成には至らなかった。その理由として、PIAS1には多くの類似したファミリーがあり、非特異的に反応してしまうことが考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
SUMO化E3リガーゼ活性を持つPIAS1や、E2リガーゼ活性を持つubc9のアデノウイルスベクターを作製した。これらのアデノウイルスベクターを前述した肺高血圧病態モデルマウスに投与し、SUMO化を促進することによって、モデルマウスの肺高血圧発症に対する影響を検討する。具体的には、右室重量や右心圧を測定し、血清を用いて平滑筋分化に関わるリガンドや炎症性サイトカイン、OPGの発現をELISAを用いて検討する予定である。また、組織所見、平滑筋分化マーカー、NotchシグナルやTGFbetaシグナルを含む平滑筋分化誘導因子や、OPG等の発現の局在・変化を免疫組織学的染色を用いて検討する。また、OPGとSUMO1は気道上皮に発現することが示されたため、今後、fluorescence activated cell sorting(FACS)を用いて、局在する細胞やその発現変化を検討する予定である。 また、種々の転写因子結合部位に変異をもつ平滑筋マーカーのプロモーター/レポーターコンストラクトをPASMCに導入し、TGFbetaやNotchシグナル等の反応部位を検討する。導入効率が悪い場合、アデノウイルスベクターを作製する。ついで、その結合サイトに結合する転写因子をChIP assayにて同定し、Sumoylation assay法やdegradation assayにてその結合因子がSUMO化されるかどうかなどのタンパクの転写後修飾について検討する。
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