研究実績の概要 |
肺動脈高血圧症(PAH)の病態には、transforming growth factor (TGF)-betaの関与や、osteoprotegerine (OPG)が肺動脈リモデリングを促進させることなどが報告されている。本研究は、血管平滑筋の分化誘導の調節異常との観点から、PAHの発症や進展におけるユビキチン様修飾(SUMO)や、SUMO化E3リガーゼのprotein inhibitor of activated STAT 1 (PIAS1)の病理生理学的意義を解明することを目的とした。 肺動脈平滑筋細胞(PASMC)において、PIAS1のsiRNAを用いたところ、TGFbetaにおける平滑筋分化マーカー誘導が抑制された。また、ルシフェラーゼアッセイにて、OPGプロモーターは、NotchシグナルであるRBP-J-kappaやPIAS family (PIAS1, PIASxalpha, PIASxbeta)、SRFにより著明に活性化された。さらに、PASMCにおいて、siRNAを用いてPIAS1をknockdownしたところ、OPG mRNA発現が抑制された。これらの結果より、PIAS1は、TGFbetaによる肺動脈平滑筋分化誘導や、OPG誘導を調節する因子である可能性がある。さらに、低酸素に加え、VEGF-R抗体を用いて、よりヒト肺高血圧の病態に近いマウスモデルを作製した。このモデルマウスを用い、平滑筋分化マーカーとTGFbeta RII、OPG、SUMO1の発現を免疫組織染色法で検討したところ、OPGの発現はSMalpha-actinの発現部位と一致せず、気道上皮細胞に強く認められた。興味深いことに、SUMO1発現も平滑筋分化マーカーの発現部位と異なり、OPGと同一の気道上皮細胞に強く認められた。 また、FGF23をアデノウイルスを用いて強制発現させたところ、OPG発現が誘導され、Runx2やMsx2, BMP4の発現を低下させ、血管の石灰化を抑制する事を示した。PIAS1とubc9のアデノウイルスベクターを作成したため、今後、前述のモデルマウスを使用して、in vivoで検討していく予定である。
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