研究課題/領域番号 |
15K09154
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
須田 将吉 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (70714509)
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研究分担者 |
清水 逸平 新潟大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (60444056)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 血管新生 / 活性酸素 |
研究実績の概要 |
本研究は新規血管老化分子として同定したGP-Xの老化関連疾患のバイオマーカーとしての有用性およびGP-Xの老化制御メカニズムを解明することを目的としている。動脈硬化モデルマウスや糖尿病、肥満モデルマウス、老化マウスなどの病態モデルマウスを作成し、大動脈のGP―Xの発現を確認したところ、GP―Xの発現が亢進していることがわかった。それらのマウスの肺から内皮細胞を磁気細胞分離で単離し、GP―Xの発現を比較したところ、やはり動脈硬化、肥満、老化マウスでは発現が上昇していた。これらのことからGP―Xは加齢関連疾患のバイオマーカーになり得ることが示唆された。次に、当科に入院した患者67人の血液からRNAを抽出し、GP―Xの発現をRT―PCRで測定したところ、動脈硬化性疾患を有する患者ではGP―Xの発現が有意に増加していることがわかり、ヒトにおいてもGP―Xは加齢関連疾患のバイオマーカーになり得ることが示された。 さらに、GP―Xの生理的意義を解明するために、疾患モデルとして、マウスの下肢血管を縛り、下肢虚血モデルを作成し、野生型マウスとGP―X欠損マウスを比較したところ、GP―X欠損マウスでは虚血後の血流改善が遅延することが明らかとなった。このことから、GP―Xが血管老化を抑制することで、血管新生を促進させる分子であることが示唆された。さらにその分子メカニズムの解明のために、活性酸素に着目したところ、GP―Xの発現を抑制した血管内皮細胞ではNADPHオキシダーゼ4(NOX4)の発現が増加することで活性酸素が増加していることが分かった。これらのことから、GP―XはNOX4を介して活性酸素を制御することで、血管老化を抑制する可能性が示唆された。 以上の結果をもって米国心臓病学会、日本循環器学会、国際心臓病研究会等、国内外で学会発表を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間初年度である平成27年では、GP―Xが加齢関連疾患のバイオマーカーとなり得ることを疾患モデルマウスを用いて検証すること、GP―X発現抑制細胞と過剰発現細胞を用いてGP―Xの制御メカニズムについて検討すること、GP―X欠損マウスの入手と解析を行うことを予定していた。概ね順調に研究が進行している。 バイオマーカーに関しては、動脈硬化、肥満、老化促進マウスを用いて、大動脈や内皮細胞でGP―Xの発現が上昇することを示唆する結果が得られた。その結果を受け、次年度以降に予定していた、動脈硬化性疾患、加齢関連疾患を有する患者でのGP―Xの発現についても、今年度から開始し、動脈硬化性疾患を有する患者において有意にGP―Xの発現が上昇していることを明らかとした。これらの結果から、GP―Xが動脈硬化性疾患のバイオマーカーとなることが示唆された。さらに例数を増やし、両群の患者背景を一致させたい。また、動脈硬化性疾患以外の疾患との関係性についても検討したい。 細胞実験に関してはGP―X発現抑制細胞と過剰発現細胞を作成し、解析を進めている。GP―X抑制細胞では老化が進行し、GP―X過剰発現細胞では老化が抑制されているという結果が得られた。また老化進行の原因として、GP―X発現抑制細胞では活性酸素が上昇しているという結果を予備実験から得られており、活性酸素を中心にメカニズムの解析を行なった。その結果、NOX4がその活性酸素の産生に関与しており、GP―Xの制御を受けている可能性が示唆されている。動物モデルに関してはGP―X欠損マウスを入手し、下肢虚血モデルでの虚血後の血流改善が遅延するという表現系が得られた。その虚血肢ではNO4と活性酸素が増加しているという結果も得られてきている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度で、GP―Xの老化制御メカニズムについてGP―X発現抑制細胞と過剰発現細胞を用いて解析を行なった。また、老化関連疾患モデルマウスにおいてGP―Xの発現が上昇すること、ヒトにおいても動脈硬化疾患患者でGP―Xの発現が上昇することを示し、疾患バイオマーカーとして有用である可能性が示唆された。さらにGP―X欠損マウスの解析からGP―X欠損により下肢虚血後の血流改善が遅延することも明らかとなった。次年度以降はGP―X発現抑制細胞と過剰発現細胞を用いてGP―Xが老化で増加するメカニズムの解明を行うこと、GP―Xによる老化制御メカニズムの1つとして関与が示唆されたNOX4による活性酸素についての詳細な解析を行うことを目標とする。 GP―Xが老化や動脈硬化性疾患で増えるメカニズムについては、TNFαによりGP―Xの発現が抑制されるという論文もあり、老化による慢性炎症が関与している可能性についても検討予定である。また、GP―Xが活性酸素を抑制しているメカニズムに関しては、NOX4阻害薬などを用いて検討する予定である。GP―Xに関連する分子に関しては、候補分子の探索に難渋した場合、プロテオーム・トランスクリプトーム解析など包括的な探索方法(バイオインフォマティクス)を用いて計画を進める。GP-Xを同定する段階からバイオインフォマティクス分野と協力しており、その遂行に問題はない。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に購入予定であったELISAキットが高価であったため、ウエスタンブロット法を用いて血中GP-Xの濃度を測定する方法にて代替した。しかしこの方法では定量性に乏しく、次年度以降予定どおり購入予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度に購入を控えていたELISAキットを次年度に購入する。
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