研究課題/領域番号 |
15K09158
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
中村 一文 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (10335630)
|
研究分担者 |
赤木 達 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (60601127)
阪口 政清 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (70379840)
伊藤 浩 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (90446047)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 肺高血圧 / ナノメディシン / 右室収縮期圧 / 血小板由来増殖因子 / 終末糖化産物受容体 / 肺動脈平滑筋細胞 / 細胞増殖 / TIRAP |
研究実績の概要 |
【肺高血圧モデルラットにおけるナノメディシンの開発】 薬剤封入ナノ粒子Drug Delivery System (DDS)を用いた基礎研究をおこなった。乳酸・グリコール酸共重合体(co-poly-lactic/glycolic acid: PLGA)という生体内で加水分解され水と二酸化炭素になる物質をナノ粒子化し、イマチニブならびにベラプロストを封入した薬剤封入ナノ粒子を、モノクロタリン誘発性ならびにsugen-hypoxia誘発性肺高血圧症モデルラットにおいて、気管内投与する治療法の開発に成功した。これらのナノメディシンは右室収縮期圧を低下させ、右室肥大を抑制した(Akagi et al. J Cardiovasc Pharamacol. 2016, Nakamura et al. J Clin Med. in press)。
【肺動脈性肺高血圧症(PAH)患者の肺動脈平滑筋細胞における終末糖化産物受容体(RAGE)シグナル抑制による過剰増殖に対する効果の検討】 培養したPAH肺動脈平滑筋細胞において検討したところ、RAGEの発現が無刺激下に増強しており、さらに血小板由来増殖因子(PDGF)刺激にてRAGEの発現は増加した。PAH肺動脈平滑筋細胞の増殖は無刺激・PDGF刺激のいずれの状態においてもcontrol 肺動脈平滑筋細胞より亢進しており、TIR/BB-loop類似構造体(mimetic), AS-1 にてTIRAP機能を抑制してみると、無刺激ならびにPDGF刺激のいずれの増殖反応も抑制した(American Heart Association 2016発表)。すなわちPAH患者の肺動脈平滑筋細胞において、一部はRAGEの発現増強を介して、過剰な細胞増殖がひきおこされており、TIRAP機能抑制を介してRAGEシグナルを抑制することが治療につながる可能性が示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【肺高血圧モデルラットにおけるナノメディシンの開発】 Prostacyclin Analogue(ベラプロスト)ならびにimatinibを封入したナノ粒子を気管内投与する治療法(ナノメディシン)の開発に成功した。
【PAH患者の肺動脈平滑筋細胞におけるRAGEシグナル抑制による過剰増殖に対する効果の検討】 PAH肺動脈平滑筋細胞において過剰な細胞増殖とRAGEの発現亢進がおきており、TIRAP機能抑制を介してRAGEシグナルを抑制することが過剰増殖をおさえることを発見した。
|
今後の研究の推進方策 |
【肺高血圧モデルラットにおけるナノメディシンの開発】 前述の如くベラプロスト・imatinibを封入したナノ粒子を気管内投与する治療法(ナノメディシン)の開発に成功したが、今後TIR/BB-loop類似構造体(mimetic), AS-1を封入したナノ粒子とRAGE アプタマーを封入したナノ粒子による治療法開発に応用する。
【PAH患者の肺動脈平滑筋細胞におけるRAGEシグナル抑制による過剰増殖・炎症に対する効果の検討】 前述の如くIRAP機能抑制を介してRAGEシグナルを抑制することが過剰増殖をおさえることを発見したが、今後炎症・アポトーシス抵抗性を抑制するか検討する。
|