研究課題/領域番号 |
15K09160
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
北本 史朗 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (00380436)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 動脈硬化 / マクロファージ / シグナル伝達 / 生体分子 / 遺伝子調節 |
研究実績の概要 |
申請者はこれまでに、糖質分解酵素キチナーゼ1がマクロファージ(Mφ)に対して抗動脈硬化的に働くことを明らかにした。さらに共免疫沈降・質量分析解析により、その作用は機能未知分子である亜鉛フィンガータンパク質329(Zinc finger protein 329; ZFP329)を介することが示唆された。本研究ではMφの分化・機能制御および動脈硬化の発生・進展におけるZFP329の役割を解明することを目的とする。 平成27年度は主にin vitro実験を行った。培養Mφ(RAW264.7細胞)においてZFP329の過剰発現実験を行った結果、ZFP329はM1型Mφマーカー(iNOS、IL-1β)の発現を増加し、M2型Mφマーカー(Arg1)の発現を抑制した。また、コレステロール代謝関連遺伝子(ABCA1、ABCG1)発現の抑制傾向を認めた。さらに、抗動脈硬化因子Transforming Growth Factor-βを介するシグナル伝達(smadのリン酸化)を抑制した。これらの作用は顕著ではなかったがZFP329の過剰発現が十分ではなかった可能性があり、以上の結果はZFP329が動脈硬化促進因子として働くことを示唆した。一方、ZFP329の発現抑制実験では有意な一定の結果を得る事ができず、今後、ZFP329遺伝子欠損マウスを用いた解析を行うことによりZFP329の機能がより明確になることが期待された。なお、平成27年度に予定していたZFP329遺伝子欠損マウスの作製(米国UC DAVIS KOMP repositoryに受託)は、計画の変更の必要性が生じたため次年度に延期することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度はin vitro実験に関してはほぼ計画通りに進展したが、同時に計画していたZFP329遺伝子欠損マウスの作製を次年度に延期する必要性が生じたため、実験計画全体の進歩状況としてはやや遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は引き続き前年度のin vitro実験を継続するとともに、ZFP329遺伝子欠損マウスの作製を早急に行うこととする。また、ZFP329遺伝子欠損マウスが得られ次第、動脈硬化発症マウスとの交配を行いin vivo実験を開始する。さらに、ZFP329遺伝子欠損マウスより採取したMφを使用してin vitro実験を行い、平成27年度に明確にならなかったZFP329欠損がMφの機能に与える影響を解析する。ZFP329遺伝子欠損マウスが得られれば研究全体の進展のスピードアップが期待され、研究計画の遅延を取り戻すとともに当初の研究計画の目標達成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に米国UC DAVIS KOMP Repositoryに受託しZFP329遺伝子欠損マウスを作製する計画であったが、予期せぬ円安の進行に伴い当初の計画より作製費用が大きく上昇したため、当該マウスを作製した場合には初年度のin vitro実験の実施に必要な予算が不足する状況となった。また、ZFP329遺伝子欠損マウスの作製は本研究の目標を達成する上で非常に重要な意味があることから延期することとし、初年度の予算の一部を繰り越し次年度に作製することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した次年度使用額の全額を平成28年度予算の一部とともに使用し、米国UC DAVIS KOMP Repositoryに受託しZFP329遺伝子欠損マウスの作製および輸入費用として使用する計画である。
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