研究課題
高血圧、生活習慣病や加齢などにより発症する動脈硬化やステント留置後の再狭窄の主要因として、血管平滑筋細胞 (smooth muscle cells; SMCs)が収縮型から合成型に形質転換することが知られている。SRFやMyocdなど形質転換を決定づける因子は報告されているが、合成型から収縮型に移行する逆形質転換メカニズムは不明であった。申請者らはヒストン修飾酵素の網羅的解析により「合成型SMCsにおけるNsd1の発現上昇」を見出した。本研究では、動脈硬化治療の鍵となるNsd1及びその下流因子群に着目し、SMCs形質転換の分子メカニズムを明らかにし、Nsd1を標的とした次世代型動脈硬化治療薬の開発に取り組むこととした。平成27、28年度の主な研究実績は、CRISPR/Cas9システムを用いてNsd1遺伝子欠損マウスを作製したことである。gRNA-Cas9発現ベクターを前核期受精卵にインジェクションし、受容雌マウス8匹に移植した。受容雌マウスから生まれたF0産子は合計25匹を確認した。これらのうち成育した個体17匹の組織よりDNAを調整し、ダイレクトシークエンスを行った。Cas9標的領域の配列を解析した結果、9匹は変異が認められなかったが8匹には塩基配列の欠損または挿入といった変異が認められ、Nsd1遺伝子改変マウスの作製を確認した。最終年度である平成29年度における主な研究実績は、本研究において新たに作製したNsd1遺伝子欠損マウスによる頸動脈結紮モデルを作製し、内膜肥厚の観察を行ったことである。頸動脈結紮の3週間後に頸動脈を回収し、結紮部位から600umの距離における内膜肥厚面積を比較した結果、Nsd1欠損マウスは内膜肥厚が顕著に低下することが判明した。以上により、Nsd1はin vivoにおいて血管平滑筋細胞の形質転換促進に働くことが分かった。
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Biochem Biophys Res Commun
巻: Biochem Biophys Res Commun ページ: 1327-1333
10.1016/j.bbrc.2016.12.036. Epub 2016 Dec 7.