研究課題
うつ病は心血管病の独立した危険因子であり、心血管病患者の予後にも影響することが知られている。申請者らは、うつ病における心血管病発症機序を明らかにするため、動脈硬化易形成マウス(apoE 欠損マウス)を用いてうつ様行動を示すモデルマウスを作製した。作製したマウスに高コレステロール食負荷を加えたところ、対照マウスと比較して動脈硬化形成が有意に増大していることを確認した。骨髄単球系細胞動態は動脈硬化形成に深く関与しているが、うつ様行動を示すマウスでは当初の予想に反して、対照マウスとの間に差を認めなかった。一方、骨髄および末梢血中における好中球分画の増加を認め、動脈硬化巣における好中球細胞外トラップ形成の亢進を認めた。細胞外トラップ形成を阻害するDNase Iを投与したところ、うつ様行動を示すマウスにおける動脈硬化形成は対照マウスと比べ同等まで抑制された。うつ様行動を示すマウスにおける好中球分画を詳細に解析したところ、自己免疫作用を抑制し悪性腫瘍細胞の増殖や転移に深く関与しているmyeloid-derived suppressor cell (MDSC)分画の有意な増加を認めた。骨髄におけるMDSCをソーティングし、PMA刺激下でのNETs形成についてフローサイトメトリー法を用いて解析したところ、対照群に比べNETs形成の有意な亢進を認めた。さらに、うつ様行動を示すマウスにおけるMDSCでは、NADPHオキシダーゼのコンパートメントであるNox2の遺伝子発現が亢進し、ROS産生が増大していることを確認した。現在、うつ様行動を示すマウスにおけるMDSCが細胞外トラップ形成を介して、心血管病発症に関与する詳細なメカニズムに関する解析を実施中である。
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Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: xxx ページ: 1-7
巻: 497 ページ: 1097-1103
巻: 487 ページ: 587-593