研究課題
KRAS遺伝子変異を有する肺癌(以下、KRAS肺癌)に対するNampt阻害の効果を再検討するため、各々のKRAS肺癌細胞株(A549、A427、H157、H2009、Calu6、H441、H1792、H23、H460、H358)へNampt阻害剤を投与し、Acid phosphatase assayを用いて細胞増殖能を評価した。その結果、KRAS肺癌のなかでNampt阻害剤に対する感受性に差を認めることを見出し、感受性別に3つの群(Sensitive、Intermediate、Resistant)へ分けた。次に、Nampt阻害による抗腫瘍効果の機序を調べるため、SensitiveなKRAS肺がん細胞株を用いて、逆相タンパク質アレイ(RPPA: Reverse Phase Protein Array)によるリン酸化タンパク質のスクリーニングを行った。これにより、MAPKシグナルに関するタンパク質のリン酸化がNampt阻害により抑制すること、細胞周期に関するリン酸化タンパク質の発現量を抑制すること、を見出した。一方で、mTORシグナルも弱いながら抑制されていたため、オートファジーが抗腫瘍効果に関連している可能性も考えられた。そこで、オートファジー関連タンパクの発現量をウエスタンブロットで評価したところ、Nampt阻害によって一部のオートファジー関連タンパク質で発現量の変化が認められたが、その程度は強いものではなかった。
2: おおむね順調に進展している
KRAS肺癌細胞株を用いて、Nampt阻害剤による抗腫瘍効果の再現性を確認することができた。また、その作用メカニズム・抗腫瘍効果についても、逆相タンパク質アレイを用いて、候補を絞ることができた。
KRAS肺癌細胞株を用いた実験を行って、NamptとMAPKシグナルおよび細胞周期関連タンパクとの相互作用や関連性を評価する。また、Nampt阻害剤に対する感受性に差がみられたが、Namptの発現量やNampt遺伝子変異の有無を細胞株間で評価し、関連性を検討する。さらにNampt阻害剤にResistantである細胞株で、MAPKシグナルや細胞周期関連タンパクの変化が生じにくいことも確認していく。作用機序の候補が見つかれば、その発現量をKRAS肺癌の臨床検体を用いて評価していく。
研究の進捗状況に応じて、必要物品を購入しており、次年度に繰り越すこととした。
試薬の一部に用いる予定である。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件) 図書 (3件)
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