研究課題
本年度は,サルコペニアCOPDの身体活動量に関連して,COPD患者の歩行時のバランス能力を新しく評価する方法を開発することを目的として研究を行った.体幹部加速度から求めたLissajous Index(LI)を用いCOPD患者の歩行時体幹の左右対称性を評価しLIの有用性を検討することを第一の目的とした.COPD患者16名,健常者21名を対象とした.3軸加速度計を腰部に装着し10mを2回歩行した.左右・上下加速度からLIを求め,COPD患者の呼吸機能,下肢筋力,片脚立位保持時間を測定した.使用した機器は3軸加速度計付き歩行分析計MG-M1110(LSIメディエンス,東京)であり,寸法は縦75mm,横50mm,幅20mm,質量約120gである.MG-M1110は10msecごとに加速度を検知し,上下,左右,前後方向の加速度をそれぞれ測定する.解析装置ゲイトビューMG-M1110-PCTM(LSIメディエンス,東京)に測定した加速度を読み込み図表ソフトMicrosoft excelに10msecごとの加速度の数値を取り出す.Lissajous Figure(LF)の作成方法は,10m歩行の加速度データから計測開始と終了のステップを1歩ずつ除外したデータを使用した.上下方向の加速度をY軸(縦軸)に,左右方向の加速度をX軸(横軸)にとって,excelを用いて散布図を描く.加速度から得られたLFを示す.COPD患者のLIの検者内信頼性と妥当性,LIと身体機能評価との関連を検討した.その結果,COPD患者におけるLIの検者内信頼性が認められ,系統誤差はみられなかった.平均LIはCOPD患者34.2±19.2%,健常者21.1±14.1%で,健常者よりもCOPD患者において有意にLIが大きかった.COPD患者のLIは片脚立位保持時間と有意な相関を認めた.以上より,COPD患者の歩行のバランス能力の評価指標として体幹加速度波形を用いたLIの有用性が示唆された.
2: おおむね順調に進展している
1年目は,COPDの身体活動性を新しく評価する指標を考案した.2年目は,COPDの身体活動性に重要な影響を与える歩行時のバランスを可視的かつ定量的に評価する新しい測定方法を開発した.最終の3年目は,以上の成果を踏まえて,サルコペニアCOPDの評価と改善に向けて新しい介入方法を考案,実施する予定である.
平成29年度は,栄養療法および低強度療法の併用プログラムすなわち在宅栄養リハビリ・プログラムの普及とその効果の検証を目的とする.呼吸困難感を指標とした運動療法の効果を検討する目的で,サルコペニアCOPD患者において呼吸困難感を指標とした運動療法の検討とメカニズムを明らかにする.次に,抗炎症作用が証明された成分を含む補助食品を用い栄養補助療法を併用して運動療法を行い,その効果を検証する.次に,在宅における継続率を上げるためのリハ・プログラム作成するために,在宅における継続性の高いリハプログラムの検討する.まず,身体活動量,ADL,健康関連QOL,在宅実施率,などの測定を行い,継続性の高いリハプログラムに関して検討する.さらに,高齢かつ重症COPDの身体活動量の評価とリハ・プログラムの効果の検証として,平成27および28年度の研究結果をもとに,実施率・継続率の最も有効なプログラムを作成実施する.本プログラムによる呼吸リハ施行後の健康関連QOL,ADL,医療費の削減効果,生存率の延長などを検討する.最終年度の平成29年度には,在宅栄養リハビリ・プログラムの普及とその効果の検証を目的とする.平成27および28年度の研究で確立された在宅呼吸リハ・プログラムの普及に努め,COPD患者における栄養療法と低強度運動療法併用の身体活動量,呼吸機能,運動耐容能,QOL・ADLに及ぼす効果に関して秋田県内の関連施設において検証する.
研究発表を行う学会出張(国外,国内)を行う機会が少なかったためである.次年度は,研究成果を発表するために,学会出張を多くする予定である.
当該年度は,研究発表を行う学会出張(国外,国内)を行う機会が少なかったため次年度は,研究成果を発表するために,学会出張を多く行う予定である.さらに,研究成果を論文として多くの学会雑誌に投稿予定である.
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