研究課題/領域番号 |
15K09169
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
山本 洋 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (00322131)
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研究分担者 |
川上 聡 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (20324254)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | IgG4 / 気管支肺胞洗浄(BAL)液 / サルコイドーシス / サイトカイン |
研究実績の概要 |
2007年~2014年の期間に当科で経験したIgG4-RD の11例(中央値62(50~78)歳、男女比=9:2)を対象とした。全例にBHLと気管支壁・気管支血管周囲束の肥厚、他臓器病変があり、経気管支鏡的肺・気管支生検でIgG4陽性細胞の浸潤が確認された。対照は、同期間にBALを施行され、BHLを伴ったサ症の33例(中央値53(21~77)歳、男女比=9:24)。MILLIPLEX MAPキット (Millipore社)を使用して、BAL液中の各種サイトカインを測定した。IgG4-RD群はサ症群と比較して高齢者、男性に多い傾向があった。IFN-γは2群間で差がなかった。また、IgG4-RD群でTh2サイトカインであるIL-5とIL-13が有意に高値、サ症群でTh1サイトカインであるTNF-α、IL-2、IL-6が有意に高値であった。IgG4-RDの病変組織でTh2優位であるがIFN-γは抑制されていないことが示されてきたが、呼吸器病変においても同様であることを初めて報告した。IgG4-RDとサ症は類似した胸部CT所見を呈すが、前者がTh2優位であるのに対して後者はTh1優位で、病態は全く異なることが示された。 さらに、同様の症例のBAL液中各種ケモカインに関しても同様のキットを使用して、検討を行った。IgG4-RDでBAL液中CCL26が高値であったことから、IgG4-RDにアレルギーが関与している可能性があることを示した。また、サ症ではCCL1が高値で、BAL液中の総細胞数、リンパ球分画(数)、IL-2、TNF-αとの相関が認められたことから、CCL1がサ症のTh2よりもTh1を介したバイオマーカーになる可能性があることを示した。 また、サ症とBHLを伴ったIgG4-RDのFDG-PET所見に関しても比較検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
気管支肺胞洗浄(BAL)液中サイトカインの測定・解析は終了して英語論文化したが、BAL液中ケモカインの測定・解析に関しては予想外に時間がかかってしまったため。
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今後の研究の推進方策 |
BAL液中のケモカインに関する結果に関しては、(国内、国外)学会発表と英語論文化を行う。 さらに、BAL液でサ症とIgG4-RDで差が認められたケモカインに関しては健常者と3群での比較を行って、各疾患のマーカーになる可能性があるかどうか検証したい。また、血清中のサイトカインとの相関を検討することで、各疾患の病態をさらに詳細に評価できると考えられる。また、治療前後を含めた病勢とケモカイン濃度の相関を評価することで、活動性のバイオマーカーになる可能性についても検討したい。 また、サ症とBHLを伴ったIgG4-RDのFDG-PET所見に関しても比較検討を行って論文化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
BAL液中サイトカインの測定は順調に進行し、解析も比較的順調に行うことができ、学会での発表や英語論文化も順調に達成できた。BAL液中ケモカイン濃度の測定はやや難航し、測定結果の解析にはさらに時間を要した。現在は英語論文を投稿する段階まできているが、当初の予想よりも研究の進行が遅れたため、次年度使用額が生じた。
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