研究課題/領域番号 |
15K09182
|
研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
齋藤 純平 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (50332929)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 呼気硫化水素 / 慢性閉塞性肺疾患 / 気管支喘息 |
研究実績の概要 |
2015年度では、バッグ回収法を用いた呼気H2S濃度測定を行い、健常者と比べて呼吸器疾患患者で呼気H2S(eH2S)値が上昇する事を報告した.しかし、実際に測定したeH2S値は、喀痰H2S値を基に換算した濃度よりも低かった.そこで、2016年度は、まずバッグ吸着及び呼出流速がeH2S値へ及ぼす影響について検討した.結果、呼気回収バッグを使用後にH2Sフリーエアーで5回以上洗浄しないと、バッグ内にH2Sが吸着してしまうことがわかった.また、呼出流速が早くなると流速依存性にeH2S値が低下することもわかった.以上より、eH2S実測値は予測値よりも低くなることが明らかになった.この問題を解決するため、一定流速の呼気を直接測定器に吹き込むことでリアルタイムにeH2S値を測定するシステムを新たに開発した.この測定システムは世界初の試みであり、2017年3月に特許出願をしたところである.なお、プレリミナリーな検討として、健常者9名、COPD患者17名に対して、リアルタイムeH2S濃度を測定したところ、COPD患者(117±19.2ppb)は健常者(91.3±24.7ppb)と比べて有意にeH2S 値が高値であり(p=0.03)、喀痰H2S濃度から予測した値に近い値であった.また、喀痰好中球の割合とも正の相関を示した(r=0.53, p=0.004).以上の結果から、リアルタイムで測定したeH2S値は好中球性気道炎症の指標として有用であり、COPDの早期診断指標となる可能性が示唆された.2017年度は引き続き、COPD患者(増悪期、安定期)および健常者に対してeH2S測定および喀痰・血液のH2S測定も同時に行い、両者の関係を見る予定である.また、臨床評価指標との関係についても検討する予定である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2016年度は継続して、バッグに回収した呼気H2S濃度の測定を健常者およびCOPD患者(増悪期・安定期)で行っていく予定であった.しかし、上述の研究概要でも述べたように、バッグに溜めた呼気ではH2Sがバッグに吸着したり、直ぐに分解したりしてしまうため、予想H2S値よりも低いeH2S値となり、正確性に欠ける測定方法である事が判明した.また、呼出流速を変えることでeH2S値が変化するため、より正確かつ安定したeH2S値の測定には新たな手法の考案・開発が必要となった.それに伴い、一時的にeH2S測定の臨床研究がストップした.しかし、年度中にリアルタイムにeH2S濃度を測定する方法を新たに開発することができた.
|
今後の研究の推進方策 |
2017年度は予定より遅れているが、健常者およびCOPD患者に対して、呼気、血液、喀痰H2S測定を行っていく予定である.また、同時に今回開発した測定法は新規性に富んだ手法であり、現在特許出願中である.国内での特許取得が完了したら国際特許の取得にも乗り出す方向で考えている.
|
次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に購入したH2S測定器を用いて、バッグに呼気を回収する手法で呼気H2Sの測定を行った.しかし、研究中に測定方法に関して種々の問題があることが判明した.そこで正確なH2S濃度を測定するためにH2S測定器を改良し、新たな呼気採取法を考える必要性が生じたため、一時的に研究がストップした.そのため繰越金が発生した.
|
次年度使用額の使用計画 |
新たに開発したリアルタイムのメンテナンスおよびマイナーチェンジに繰越金を充てる予定である.また、現在は国内特許出願中であるが、特許取得できた際には、国際特許出願も検討しており、その一部に本科研費を充てる予定である.更に、呼気H2Sとともに喀痰・血液も採取しており、そのH2S濃度測定および関連指標(血液・喀痰IL-8やIL-6)の測定のための費用に充てる予定でもある.
|