研究課題
本研究では、Danger signalの一つであるATPによる喘息病態への臨床的寄与およびそのメカニズムの解明を進めている。昨年までに、重症喘息での喀痰中ATP濃度の上昇や同ATP濃度と呼吸機能障害、喀痰中好中球比率および喀痰中好酸球+好中球比率との関連性を見出した。また喘息患者で、喀痰中ATPは喀痰中好中球エラスターゼ(NE)とEDNに相関することを見出した。以上の結果から喘息患者、特に重症喘息ではATPが活性化好中球および好酸球による気道炎症進展に寄与しうることが推測された。関連して今年度は、高齢者喘息(61才以上)における喀痰中NEの増加や喀痰中NEとEDNとの相関性、喀痰中EDNと呼吸機能低下の相関性を見出した。また重症喘息患者を喀痰好酸球比率(2%)と呼気NO(25ppb)の値で4群分割した解析を行い、喀痰好酸球比率と呼気NOが高い患者は年間発作頻度増加を示すことを見出した。In vitro研究では、LPS刺激を契機とした好中球および好酸球による喘息気道炎症修飾に関する機序の解明を進めていた。昨年までに好酸球組織間隙遊走能実験にて、LPS刺激下活性化好中球への好酸球の組織間隙遊走能が、ATPの対応受容体であるP2レセプターの阻害薬で抑制されることを見出していた。今年度は抗P2Y2受容体抗体にて同事象の有意な抑制を示す事を見出した。以上より、ATPはLPS誘因活性化好中球による好酸球集積を誘導し喘息の病態形成に寄与しうると推測された。今年度は上記の機序の検証のために、BALB/cマウスにて好酸球および好中球混合型慢性気道炎症モデルを作成を試みた。野生型マウスにOVAおよびS.aureus粒子の経気道的投与による感作を行い、第21 日から23 日に OVA/PBS経気道投与すると、BAL中好酸球および好中球数が増加すること確認した。以上の結果の論文化を進めている。
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