研究課題/領域番号 |
15K09189
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
滝澤 始 杏林大学, 医学部, 教授 (80171578)
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研究分担者 |
渡辺 雅人 杏林大学, 医学部, 助教 (00458902)
皿谷 健 杏林大学, 医学部, 助教 (40549185)
田村 仁樹 杏林大学, 医学部, 助教 (80616607)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 難治性喘息 / 好中球性炎症 / 自然免疫 / ウイルス感染症 / マクロライド薬 |
研究実績の概要 |
難治性喘息の病態、とくに好中球性喘息に焦点を当て、その機序の解明と治療戦略の確立を目的として、in vitro、マウスの実験、および臨床的検討を行い克服のための総合的な戦略を確立することを目指す。ヒト気道上皮細胞およびその細胞株BEAS-Bでの検討では、LPSやflagellinを含む細菌由来物質、RNAウイルスのホモログであるpoly I:Cを添加すると、IL-8, CXCL-1 (Groα)及びRANTESなどの著明な誘導を認めた。 その細胞内シグナル機構の解明のため、ウェスタンブロット法やsiRNAによる解析を進め、MAPK系の関与やIRF-3の役割について明らかにできた。(中本、乾、佐田)。 臨床的検討では杏林SARPの症例組み入れ(倫理委員会承認済み)を進め、好中球性喘息群の抽出とそのほかの群との比較を行っている。その結果、当院を受診中の気管支喘息患者を対象とした検討で、酸化ストレスに注目すると、白血球数、好中球数、CRP、IL-6と正の相関を示し、%FEV1(%1秒量)とは負の相関を認めた(r=-0.217, p<0.05)。さらに、3か月以内に救急外来受診または緊急入院を要した患者は、酸化ストレスが有意に高かった。以上から酸化ストレスは喘息の治療・管理に有用なマーカーとなる可能性があることを報告できた(Nakamoto K, et al, Takizawa H: Serum Reactive Oxygen Metabolite Levels Predict Severe Exacerbations of Asthma. PLoS One. 24;11(10):e0164948. 2016.)。さらに、現在喘息で注目されているIL-33の受容体であるST-2の血清中濃度が、喘息の増悪のよい予測マーカーであることを確認しつつある(渡辺、中本、滝澤、皿谷)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスの実験がやや進捗のスピードが遅れているが、それ以外では、ヒト気道上皮細胞およびその細胞株BEAS-Bでの検討は十分な成果をあげつつあり、また臨床的検討では杏林SARPの検討(倫理委員会承認済み)により100名以上を組み入れることができ、かつ酸化ストレスマーカーやST-2という新規の増悪予測マーカーを見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト気道上皮細胞およびその細胞株BEAS-Bでのin vitroの検討は十分な成果をあげつつあり、これらの結果から新規の喘息治療薬開発への候補分子を見出すことを目指す。また臨床的検討では杏林SARPの検討(倫理委員会承認済み)により100名以上を組み入れができ、現在前向きの調査を行っている。最終年度ではクラリスロマイシン少量長期投与の効果の検証を目指した臨床研究を予定中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度研究計画における、マウスを用いた実験的自然免疫誘導喘息モデルの作成のために使用した、マウス購入費、及び実験用消耗品が当初予算よりやや低額だったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度研究計画に基づいて、実験用消耗品として使用する。
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