研究実績の概要 |
難治性喘息の病態、とくに好中球性喘息に焦点を当て、その機序の解明と治療戦略の確立を目的として、総合的な戦略を確立することを目指した。ヒト気道上皮細胞およびその細胞株BEAS-Bでの検討を行い、LPSやflagellinを含む細菌由来物質、RNAウイルスのホモログであるpoly I:Cを添加すると、IL-8, CXCL-1 (Groα)及びRANTESなどの著明な誘導を認めた。 その細胞内シグナル機構の解明を進め、MAPK系の関与やIRF-3の役割について新知見を明らかにできた。また、選択的JAK-1,2阻害薬であるルキソリチニブが強力な抑制効果を示すことを見出した。 臨床的検討では杏林SARPの症例組み入れ(倫理委員会承認済み)を進め、治療抵抗性や増悪リスク群の解析を進めた。当院を受診中の気管支喘息患者を対象とした検討で、酸化ストレスに注目すると、白血球数、好中球数、CRP、IL-6と正の相関を示し、%FEV1とは負の相関を認めた(r=-0.217, p<0.05)。さらに、3か月以内に救急外来受診または緊急入院を要した患者は、酸化ストレスが有意に高かった。以上から酸化ストレスは喘息の治療・管理に有用なマーカーとなる可能性があることを報告できた(Nakamoto K, et al PLoS One. 24;11(10):e0164948. 2016.)。さらに、IL-33の受容体であるST2の血清中濃度が、好中球数とともに独立した喘息の増悪予測マーカーであることを見出した(投稿中)(。クラリスロマイシンによる難治性喘息の治療の臨床研究はいまだ施設審査の段階にとどまっている。 以上の研究により、難治性喘息には好中球とともに酸化ストレスやIL-33/ST-2系が重要な臨床群が存在し、その克服のためには新たな治療戦略が必要と考えられた。
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