研究課題
RSウイルス感染は、呼吸器や循環器の慢性疾患を有する患者において重篤性が高いと考えられている。そこで、慢性呼吸器疾患として、喘息と間質性肺炎を対象にした解析を行った。喘息:喘息の成人患者の増悪時に採取した検体から検出されるウイルスの種類とその頻度を比較した。対象となった患者は106人(入院n=49、外来n=57)存在した。呼吸器ウイルスは、入院患者では67.3% (n=33) 検出され、外来患者の19.3% (n=11)より有意に高かった。検出頻度の高いウイルスはhuman rhinovirus(n=24)、human metapneumovirus(n=9)、influenza virus (n=8)で RSウイルスは3人に認められた。また、RSウイルスは9月から11月にのみ検出されていた。上記より秋季の喘息増悪にRSウイルスが関与している可能性がある。間質性肺炎:特発性間質性肺炎や膠原病に伴う間質性肺炎は、急性増悪を契機に病態が悪化し、しばしば致死的になる疾患である。その増悪時には、呼吸器ウイルス感染の関与が疑われている。そこで、本疾患患者の増悪時にRSウイルスを含む呼吸器ウイルスの検出を調べた。対象となった患者は78人存在し、何らかのウイルスが検出された患者は15人 (19.2%)存在した。検出頻度の高いウイルスは、human herpesvirus 7 の単独検出(n=4)やhuman herpesvirus 7 とcytomegalovirusの共検出(n=3)、influenza virus(n=3)、influenza virusとcytomegalovirusの共検出(n=1)であった。しかし、RSウイルスを検出した患者は1例も存在しなかった。RSウイルスは、間質性肺炎の増悪に関与は乏しいと考えられる。
4: 遅れている
RSウイルス感染を疑う特異的な症状・所見はなく、流行期に検体を採取する必要があり、症例の大幅な増加が難しい。また、共同研究者の施設移動に伴い、気道検体等の微生物学的な(RSウイルス)解析を迅速に行うことが困難となった。そのため、研究期間の延長を行った。
共同研究者の施設移動に伴う微生物学的な(RSウイルス)解析が遅れている点:新たな施設と共同研究を行うことで解析を行う予定である。また、多くの症例で解析を可能にするため、RSウイルスが増加し始める秋季から検体採取を再開し、症例を追加する。
研究の遅れに伴い未使用額が生じた。そのため、RSウイルスの同定、および血液でのバイオマーカー(LL37 など)測定にかかわる費用が必要である。
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