研究課題/領域番号 |
15K09192
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
泉崎 雅彦 昭和大学, 医学部, 教授 (20398697)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 慢性閉塞性肺疾患 / 認知機能障害 / 脳局所体積 / MRI / 海馬 / 扁桃体 |
研究実績の概要 |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)はタバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じる肺の炎症性疾患である。さらにCOPDは肺以外にも影響を与え、全身に多種の併存症を誘発する。最近ではCOPD患者の認知機能低下が指摘されるようになった。本研究の目的はCOPD患者において、脳MRI画像データを用いて海馬、扁桃体を中心とする脳の局所体積の変化を定量化し、健常人との比較によってCOPD患者の認知機能障害と脳の形態的変化との関連を明らかにすることである。それによって将来のCOPDの認知機能障害の治療展開に向けての神経生理学的な裏付けを得ることをめざす。さらには呼吸リハビリテーションを含むCOPDの治療では患者自身が疾患に取り組むセルフマネジメントの重要性が高まっており、患者の認知機能障害の存在に理解が深まれば、患者教育そしてCOPD治療の充実につながる。 COPD群の対照群である高齢健常者群30例にて、嗅覚テスト、記憶テスト(Mini Mental State Examination、Montreal Cognitive Assessment)、解剖画像撮像を完了した。現在は海馬および扁桃体の体積測定を目的とした画像前処理(頭部の位置補正、標準脳への重ね合わせ)を行っている。海馬、扁桃体の体積測定では手動により輪郭を抽出するが、主観によるバイアスを軽減させるため、ブラインド化された画像で体積測定を行い、また体積測定は2名にて行い信頼性テストを行う。体積測定手技の妥当性の最終確認を行っており、その終了後にただちに対照群30例の体積測定を実施する。COPD群での解剖画像撮像および体積測定については荏原病院倫理委員会の承認が得られ、COPD群の解剖画像撮像をまもなく開始する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理由として、荏原病院倫理委員会でのCOPD患者での研究承認を得るまでに時間を要したこと、MRI装置の入れ替え工事に時間を要したことが挙げられる。いずれもが完了しており、COPD患者でのデータ収集と解析を最優先に取り組む。高齢健常者群でのデータ収集は完了しており、本年度は集中して解析に取り組み、高齢者内での違い(記憶機能と肺機能検査との相関性、海馬体積と喫煙歴との関連性など)を明らかにする。またCOPD群においても解析を進め、高齢健常者群との比較を行う。
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今後の研究の推進方策 |
高齢健常者群、COPD群の記憶テストの結果、生活習慣、肺機能検査の結果と上記脳領域の体積との関連性を明らかにし、COPDに至る前にいかに健康状態を維持すべきかを明らかにし、提案していくことが重要と考える。とりわけCOPDと診断されていない高齢健常者の細かな解析結果(喫煙歴などで分類する群比較、生活習慣で分類する群比較)は、一般に向けて発信可能な情報となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初学会での研究発表のための旅費40万円を想定していたが、COPD群での研究進行が遅れたため、平成28年度は旅費として使用しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度ではCOPD群での研究成果が見込まれるため、研究発表のための旅費として使用する。他に消耗品購入費、英文校正費、論文投稿費、論文オープンアクセス化の費用などに使用する。
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