研究課題
本研究では慢性閉塞性肺疾患(COPD)のMRI画像から記憶と情動の中枢である海馬、扁桃体の体積を抽出し、年齢が一致した健常者と比較をした。またCOPDの生活習慣、認知機能検査、生理学的指標と体積がどのような関係性があるのかを検討した。20名のCOPD患者のMRI撮像を完了し、解析前の処理(MRI画像の動き補正、標準化、画像のスムース化)を行い、画像をブラインド化した後、海馬、扁桃体の測定を2名で行った。測定後、海馬、扁桃体体積の2名での信頼性テストを行い、信頼性をSPSSより検討したところ測定者内信頼性、測定者同士の信頼性とも有意(> 0.7)であることから測定データの妥当性を得ることができた。COPDは健常者と比較し、左海馬体積の有意な減少を認めた(P < 0.05)。年齢、認知テスト、うつ尺度、活動性尺度、1秒率とそれぞれの体積との相関性をみたところ、上記のパラメーターと相関は認められなかった。左扁桃体に関してはCOPDの罹患期間に負の相関があり、罹患期間が長いほど左扁桃体の体積は小さいことが認められた(r = 0.51)。グループ比較でのCOPDの左海馬体積の有意な減少は他の要素、例えば低酸素、高二酸化炭素(有意ではないがPaCO2 と海馬体積に負の相関の傾向がみられる)の影響が考えられる。また長期に渡る情動的ストレス(息苦しさなど)は扁桃体に影響を与えると考えられる。COPD発症の初期の段階で、どのような治療、行動療法、ストレスを軽減する情動的アプローチが海馬、扁桃体の体積減少の進行をとどめるのか今後の課題である。
すべて 2018
すべて 学会発表 (2件)