研究課題/領域番号 |
15K09194
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
原 弘道 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (70398791)
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研究分担者 |
荒屋 潤 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (90468679)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 特発性肺線維症 |
研究実績の概要 |
IPFでは肺線維芽細胞のPGE2産生低下が線維化進展に関与するとされており、また、IPF患者のBAL中のPGE2が低下しているとの報告もあり、IPFでは尿中PGE-MUMが低下している可能性を考え、研究を開始した。 現在、IPFを含む各種呼吸器疾患患者から尿検体を集め、適時PGE-MUMの測定を行っているが、予想と異なり、IPF患者を含む間質性肺炎患者のPGE-MUMはコントロールや気管支喘息患者に比べ高値であった。COPD患者のPGE-MUMもコントロールや気管支喘息患者に比べ高値であったが、間質性肺炎患者と比較すると低値であった。今後、間質性肺炎患者においてPGE-MUMの測定値と血液ガス、臨床的重症度、肺機能(VC、DLCO)、画像所見(線維化スコア)、既存のマーカー(KL-6, SPD)などの各種臨床データとの比較を行う予定である。 また、IPFにおけるPGE-MUM産生増加の機序を明らかにするための検討も行っている。PGE2は、COX-1、COX-2、PGESにより合成され、15-hydroxyprostaglandin dehydrogenase(15 –PGDH)により分解される。そこで、肺実質、気道におけるCOX-1、COX-2、15-PGDHの発現を、当院にて切除された正常肺とIPF肺との間で比較し、PGE-MUMとの関連性を検討する予定である。現時点では、免疫組織染色の条件検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PGE-MUMの臨床検体は順調に集積しており、間質性肺炎患者では、コントロールより有意に高値をとるという重要な結果が得られている。今後、さらなる詳細な解析によりPGE-MUMのバイオマーカーとしての新たな役割について明らかにできると考えている。PGE-MUM高値のメカニズムについては、免疫組織染色や、培養細胞系を用いた検討で明らかにする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
IPF肺組織におけるCOX-1、COX-2、15-PGDHの発現を免疫組織染色により検討する。その結果から、IPFにおけるPGE-MUM高値のメカニズムを推定する。すなわち、COX-1、COX-2の増加によりPGE-MUM産生が亢進しているのか、あるいは、15-PGDH の低下によりPGE-MUM分解が抑制されているのか明らかとする。 さらに、培養細胞系を用いた検討により、IPFでのPGE-MUM高値のメカニズムを明らかにする。TGFβはIPF病態の線維化進展で重要な役割を果たしており、実際にIPFのBALではTGFβ濃度が増加している。また、TGFβが上皮細胞に対して細胞老化を誘導することと、IPFでは化生上皮細胞における細胞老化が亢進し、線維化進展と密接に関連する可能性を我々は報告している。そこで、TGFβによる細胞老化誘導とPGE2産生亢進の関連を検討する。TGFβ刺激により気道上皮細胞に細胞老化を誘導し、COX-1、COX-2、15-PGDH、の発現の変化を検討し、さらに培養上清中のPGE-MUMの測定を行う。線維芽細胞においてもPGE2産生能についての比較検討を行い、さらに、PGE2受容体の発現量の違いも検討する。
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