研究課題
プローブ型共焦点レーザー顕微鏡(pCLE)は内視鏡下に蛍光組織所見を観察でき生検を行わない病理診断の可能性が期待されている(optical biopsy)。今年度は以下の2つの方法で広くびまん性肺疾患のpCLE像を記録解析した。1 びまん性肺疾患の病理像とpCLE像を対比解析する目的で胸腔鏡下肺生検検体を直接観察したpCLE所見を、慢性線維化を来すUIP/IPF、fibrotic NSIPおよびCPFE(combined pulmonary fibrosis and emphysema)で比較検討した。pCLE像の異常所見を, 1 肺胞壁irregularity, 2 肺胞壁に固着する細胞所見、 3無蛍光スペースの増大、 4屈曲断裂を伴う肺胞圧縮、5 断裂を伴わない肺胞圧縮に分類して、病理学的に蜂巣肺所見を持つIPF, NSIP,CPFEの3群で比較検討すると、IPFでは1,3,4 CPFEでは3,5の所見が強くNSIPではいずれの所見も比較的均等であった。IPFでは4の所見が、NSIPでは2の所見が他の2群に比較して有意で、3疾患それぞれに特徴的なパターンを呈する傾向が示された。2 胸部CTのみで病変を指摘できる早期肺胞蛋白症(PAP)3症例に対して、CTで病変区域の責任気管支を同定しガイドシース法を併用してpCLEを挿入した。PAPのpCLE像では肺胞領域に輝度の高い流動性物質と強い蛍光を発する大型の細胞が多数認められ、肺胞壁に軽度の肥厚を認めた。これは肺胞内に充満したサーファクタント由来物質とそれを貪食した泡沫状マクロファージを映していると考えられPAPに特徴的な所見と考えられた。PAPに対するoptical biopsyは挿入するだけで極めて特徴的な画像所見を得る事ができ、早期病変に対しても生検を実施することなく確定診断できる可能性が示された。
2: おおむね順調に進展している
今年度の解析をもとに次年度からは、びまん性肺疾患とくに慢性線維性間質性肺炎を中心に気管支鏡検査時のreal time pCLE像を収集し、外科的生検などの大きな組織での病理所見と対比させることができる。次年度は蛍光像で得られた細胞image、特に肺胞マクロファージの自家蛍光輝度に注目し、病態との関連を解析することができる。
従来どおりびまん性肺疾患の末梢肺におけるpCLE像を収集、解析し病理像と対比させることによって従来なかったpCLEによる肺の画像データベースを構築する。蛍光輝度を定量解析し肺胞壁、肺胞マクロファージ、その他の細胞などの疾患による蛍光輝度の差から、各びまん性肺疾患の病的状態との関連を調査する。
病理評価のための消耗品が計画より安価に購入できたため
次年度、共焦点レーザー顕微鏡probeによる解析を続けるためには新たなprobeの購入が必須であり、購入のために使用する予定である。
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