研究課題/領域番号 |
15K09199
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
丸山 淳子 鈴鹿医療科学大学, 医用工学部, 教授 (50263017)
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研究分担者 |
丸山 一男 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20181828)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 肺高血圧症 / 肺静脈病変 |
研究実績の概要 |
低圧低酸素性肺高血圧(PH)発症過程における心エコー,心カテにより得られた循環動態の経時的変化を観察した。各パラメーター間の相関関係および肺動脈、肺静脈における血管病変との関連を評価することにより肺静脈血管病変と循環動態の変化との関連を検討した。 方法:ラットを7日間(day7群)、14日間(da14群)、21日間(day21群)低圧低酸素暴露(1/2 大気圧)後、体重を測定しペントバルビタール腹腔内麻酔を行った。心エコー施行後、右心カテーテルを挿入し、圧波形と循環動態を測定した。人工呼吸器下に開胸したのち、肺循環を順行性(あるいは逆行性)にタイロード液を灌流させカテーテルから定常圧でバリウムゼラチンを注入しクランプした。心臓と肺を一塊に摘出し、経気道的にホルマリン灌流固定を行った。肺組織標本を作成し、肺血管病変の定量評価を行った。 結果:心エコー所見では右室流出路血流速度時間積分値(VTI)は正常圧大気飼育群と比較して低酸素暴露群で有意差はみとめられなかった。右室流出路収縮期流速加速時間 / 右室駆出時間(AcT/ET)は低酸素暴露早期(day7, day14群)で有意な低下を示した。肺動脈収縮期圧(sPAP)は右室収縮期圧(sRVP)より低酸素暴露早期から上昇し、発症過程で心カテによる圧所見の中で最も顕著な上昇を示した。また、Ht、RVHも低酸素暴露早期から上昇した。肺血管病変については、低酸素性肺高血圧ラットモデルでは肺動脈の中膜肥厚 (%MWT) が認められ、sPAPが高いと%MWTが大きくなる傾向が見られたのに対し、肺静脈ではs PAPと関連した%MWTの上昇は認められなかった。以上より、低圧低酸素性PHモデルでは肺動脈中膜肥厚の変化は循環動態変化の誘引の一つである可能性があるが、肺静脈中膜肥厚は低酸素暴露により発生するとはいえず、循環動態の変化の誘因になる可能性も低いと推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
肺高血圧動物モデルとして従来より頻用されている低酸素性肺高血圧ラットモデルを使用して、血管内マイクロビーズインジェクションによる肺動脈血管と肺静脈血管の同定をそれぞれ試みた。この方法は組織固定までに加熱する工程がなく抗原性を保持できると考えられたため、当初優先して行ったが、組織固定の段階で血管内にとどまる確率が低かったため、血管同定が困難であることがわかった。次にバリウムインジェクションの方法に変更し、得られた肺組織を用いて実際に心エコーや右心カテーテルにより得られた他の循環動態パラメータとの相関関係をそれぞれ検討し、前述の結果が得られた。しかし、予定していた検体数より少ないため、今後、同モデルについて検体数を増やし、さらに他の肺高血圧モデルについて同様の方法を試み、肺静脈病変の評価方法を確立する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は、肺高血圧動物モデルとして従来頻用されてきた低酸素性肺高血圧ラットモデルを使用して、肺動脈血管病変および肺静脈血管病変の評価方法を試み、実際に心エコーや右心カテにより得られた他の循環動態パラメータとの相関関係をそれぞれ検討した。今後は同様の方法を用いて、① 非可逆性肺高血圧モデルであるモノクロタリン誘発性モデル、② 肺高血圧動物の新しい血管閉塞モデルであるVEGF 受容体チロシンキナーゼ阻害薬(SU5416)投与と低酸素曝露を組み合わせることにより作成するSU/Hypoxia モデルについても同様の評価方法を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた方法で、3種類のうち1種類のモデルを用いて実験を行ったが、得られた結果が不十分であったため、実験方法を途中で変更した。予定した他の2種類のモデルについて実験継続中であり、実験進捗がやや遅れている。
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次年度使用額の使用計画 |
今後は同様の方法を用いて、他の2種類の疾患モデルについても実験を進める予定である。
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