背景:レプチンは、脂肪細胞から分泌されるホルモンであり、視床下部に作用して摂食抑制作用、エネルギー消費亢進作用を示すが、他の作用として、好酸球や好塩基球等の炎症細胞を活性化することで全身の炎症を促進することが報告されている。また、炎症細胞以外にも、肺の構造細胞、気道上皮細胞にも作用し、その活性化を引き起こすことが報告されている。しかしながら、レプチンによる肺線維芽細胞に対する影響はほとんど明らかにされていない。 目的:レプチンが肺線維芽細胞に及ぼす影響およびその機序を明らかにすることを目的とする。 方法:正常ヒト肺線維芽細胞(NHLF)に、レプチンおよび炎症性サイトカインを作用させ、これらの細胞のサイトカイン産生を解析した。また、同様にレプチンを作用させ、NHLFの増殖能解析した。最後に、NHLFによるレプチンレセプター、ObRの発現を、realtime PCRおよびflowcytometryにより解析した。 結果:レプチンは、濃度依存的にNHLFのMCP-1、EotaxinのmRNA発現およびタンパク発現を増強した。また、レプチンは濃度依存的にNHLFの細胞増殖を促進した。レセプター発現を解析したところ、レプチンは遺伝子レベル、タンパクレベルで既知のレプチンレセプター、Ob-Rを発現しており、Ob-RをSiRNAでノックダウンし、レプチンを作用させると、NHLFのレプチンによるEotaxin産生増強作用は減弱した。 考察:肥満が喘息を増悪させる機序の一つに、レプチンのOb-Rを介した肺線維芽細胞からのサイトカイン、ケモカイン産生能の増強および増殖能の亢進が関与している可能性が示唆された。
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