研究実績の概要 |
自己免疫性肺胞蛋白症 (APAP)の標準治療は全肺洗浄および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子 (GM-CSF)吸入であるが、治療の効果は限定的で新たな治療ターゲット、治療方法が不可欠である。 APAPは抗GM-CSF自己抗体が病因と考えられていることより、我々はAPAP病態とB細胞およびB細胞活性化因子に注目し検討した。 B細胞活性化因子としてBAFFおよびAPRILがAPAP患者血清および気管支洗浄液中で健常者および肺疾患コントロールと比べ過剰産生されていることを明らかにした。肺局所のPAP病変域においてもマクロファージがBAFFおよびAPRILを発現していることを免疫組織学的に確認した。しかし、全肺洗浄およびGM-CSF吸入療法の前後においてBAFF、APRILの有意な減少は確認できなかった。B細胞活性化因子の過剰産生を認めたことより、B細胞自体の増加も考えられたが、APAP病態においてB細胞が顕著に増加していることは認められなかった。また、APAP病態ではGM-CSF自己抗体の過剰産生が生じているため液性免疫異常が示唆された。そこで我々はAPAP患者血清中におけるTh1 cytokines (IL-2, IFN-γ, IL-12 (p70), GM-CSF, TNF-α)およびTh2 cytokines (IL-4, IL-5, IL-10, IL-13)濃度を評価した。自己抗体の過剰産生を伴う病態であるAPAPではTh2サイトカインの亢進を考えたが、Th1サイトカインであるIL-2, IL-12 (p70)濃度が健常者と比べ高値であることを確認した。これら結果はAPAPが免疫異常を伴う病態であることが示唆された。 以上の我々の結果は、APAP治療には全肺洗浄、GM-CSF吸入、B細胞活性化因子抑制という集学的治療の必要性を示唆するものであると考える。
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