研究課題
長時間作用性気管支拡張薬の登場によりCOPDの治療成績が向上しつつあるが、慢性気管支炎や日常的に喀痰の多い症例では依然として頻回のCOPD増悪を来たし治療に難渋している。近年、肺にも微生物叢が存在しその量的・質的変化が喘息やCOPDの病態との関連を示唆する報告が相次いでいる。これまで申請者は、気道粘膜下腺細胞にToll様受容体(TLR)システムを利用した即時的な分泌増強作用が存在することを報告してきた。本研究では、COPD患者のウイルス感染後に、肺微生物叢の質的・量的変化が生じ気道過分泌が惹起されるとの仮説のもと、気道分泌腺細胞に対する詳細な機能解析を行い、病的状態で破綻する気道防御調節機構の病態生理の解明を行う。今年度は、微生物抗原を認識するTLR7シグナルの気道分泌に対する機能解析、気道分泌腺細胞上での発現に加えて、細胞内カルシウム調節機序に対する影響を確認した。またCOPD患者気道におけるTLR7発現を定量化し、TLR7シグナルの機能不全の可能性を探った。2種類のTLR7リガンド(R837, CL264)が、細胞内小胞体へのカルシウム再取り込みに重要なSERCA2の機能亢進によって早期に細胞内カルシウム濃度を低下させ得ること、またCOPD気道ではTLR7発現が健常人に比して有意に低下していることを明らかにした。本研究期間全体を通じて、COPDではTLR7による機能不全が存在することでウイルス感染時に遷延する気道過分泌が惹起され、細菌感染などの二次感染を来すことで容易に増悪を発症する可能性が示された。TLR7の機能回復を可能とする新規治療薬の開発によりCOPD増悪予防が可能となり得る。以上の研究結果は平成29年4月の日本呼吸器学会総会および同年5月の米国胸部疾患学会国際会議で発表した。また本研究成果のまとめを英語論文化し、現在欧州生理学雑誌に投稿中である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
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