研究課題
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、主に喫煙によって気道と肺胞に慢性炎症が生じることで発症し、末梢気道壁の肥厚・狭窄、肺胞壁の破壊、肺胞マクロファージ数の増加などの特徴を示す。新規サーファクタントSCGB3A2は、肺炎や肺線維症の改善効果、肺発生における細胞増殖や線毛の再生効果を有する。そこで、本研究ではSCGB3A2のCOPD改善効果の検証を行ってきた。主に(1)Scgb3a2遺伝子改変マウスを用いてタバコ煙曝露によるCOPDモデルの作製とマウスモデルを用いたSCGB3A2のCOPDに対する改善効果の検証、(2)細胞培養系を用いたSCGB3A2の抗アポトーシス効果とマクロファージへの効果の検討を実施した。本研究では、疾患モデル動物、肺およびマクロファージ培養細胞、器官培養した肺を研究材料として用い、細胞生物学、分子生物学的解析、生化学的手法を駆使し、疾患の病態解明を総合的な理解に努めてきた。本研究により、COPD治療薬開発への基盤が構築されることを期待し、現在、治療薬が存在しないCOPDの新規治療薬としての可能性と発展に貢献することを期待した。最も興味深い結果は、肺組織における形態観察および気腫化評価(LM:mean linear intercept, DI:destructive index)によってScgb3a2-KOマウスではタバコ煙曝露により気腫化が亢進し、Scgb3a2-TGマウスではタバコ煙曝露後も気腫化は認められないことが明らかになった点である。すなわち、SCGB3A2はCOPD、特に気腫化を抑制する可能性が見出された。このメカニズム解明として、α1-アンチトリプシン(A1AT)と発現を制御するSTATに着目して解析を行い、STAT3によるA1AT転写促進の可能性を示した。
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