研究課題
難治性喘息患者の病態を解明することは今日の喘息診療において最重要課題の一つである。難治性喘息には好中球性炎症やステロイド抵抗性が関与するがその分子機構は不明である。2001年に我々が発見したIL-17Fは喘息患者の気道で高発現しており、難治性喘息の病態に深く関与するTh17細胞から産生される。IL-17Fは喘息の治療戦略上重要な標的分子の一つと考えられるが、その機能的役割の全容は未だ明らかではなく、特に気道平滑筋細胞は全く検討されていない。さらに吸入ステロイド薬(ICS)と長時間作用性β2刺激薬(LABA)などの抗喘息薬がIL-17Fの機能に与える効果も不明である。本年度は、気道平滑筋細胞においてIL-17Fの刺激によって喘息の病態に関与するIL-6の発現が遺伝子レベルと細胞上清中の蛋白レベルで増強した。その発現機構として、IL-17Fはステロイド感受性に関与するTAK1のリン酸化を誘導した。TAK1の阻害剤 5Z-7-Oxozeaenolは濃度依存的にIL-6の産生を抑制した。さらにTAK1のsiRNAを気道平滑筋細胞に移入するとIL-17FによるIL-6の産生が有意に抑制された。次にNF-κBの関与について検討した。IL-17FはNF-κBのサブユニットであるp65をリン酸化を誘導した。TAK1のsiRNAはp65のリン酸化を抑制した。NF-κB阻害薬 BAY 11-7082は濃度依存的にIL-6の産生を抑制した。さらにp65のsiRNAはIL-17FによるIL-6の産生を有意に抑制した。以上から気道平滑筋細胞におけるIL-17FによるIL-6の発現はTAK1-NF-κB経路を介することを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
上記の研究結果は日本呼吸器学会学術講演会、日本アレルギー学会学術大会、米国胸部疾患学会で発表した。また、国際誌に投稿中である。
今後は好中球性炎症に関与するIL-17FによるIL-8の発現ならびにその分子機構を解明していく。特に転写伸長因子positive transcription elongation factor b (P-TEFb)の関与について重点的に解析する。さらに正常ヒト気道平滑筋細胞と喘息患者由来の気道平滑筋細胞を用いてICSとLABAがIL-17Fの機能に与える影響とそのメカニズムの差異を解析する。これらの検討から難治性喘息の病態解明および治療におけるIL-17Fの意義を明らかにし、臨床応用につなげていく。
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アレルギーの臨床
巻: 36 ページ: 52-56