研究実績の概要 |
昨年度までの研究成果をふまえ、ヒト気管支平滑筋細胞(Human bronchial smooth muscle cells: BSMC)を細胞外酸性pH(pH6.3)で刺激し、interleukin-8 (IL-8)産生に対するデキサメサゾン(dexamethasone: DEX)の抑制効果について詳細な研究を進めた。DEXは前処理30分間で研究を進めたが、前処理がなく、プロトン刺激と同時にDEXを添加しても有意にIL-8産生を抑制し、mRNA発現も抑制した。また、IL-8を刺激後短時間で産生するBSMCのロットを用いて実験を行っても、刺激後3時間でのIL-8産生をDEXは有意に抑制した。以上の結果より、DEXは別の蛋白質の翻訳を介して、IL-8産生を抑制するのではなく、おそらくグルココルチコイド受容体(glucocorticoid receptor: GR)と結合して核内へ移行したDEXが直接転写レベルでIL-8 mRNA発現を抑制するものと予想された。前年度までの研究結果と同様に、DEXは転写因子NF-kBのp65のリン酸化や、リン酸化されたp65のDNAの結合には影響しなかった。また、AP-1の各コンポーネント(c-Jun, JunB, JunD)のDNAの結合にも影響しなかった(昨年度得られたJunBおよびJunDのDNAへの結合抑制は繰り返した実験での再現性がみられなかった)。IL-8の遺伝子転写に関連する他の転写因子に関しても、DEXがDNAへの結合を抑制する結果は得られなかった。以上より、プロトン刺激によるBSMCのIL-8発現誘導のDEXの抑制機序として、転写因子のDNA結合後、mRNAの発現までのプロセスに、DEXとCR複合体が作用するものと予想された。
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