研究課題
未だ有効なワクチンが開発されていない結核感染症に対して,「生分解性ナノ粒子 (bio- degradable nanoparticles) 」が抗原提示細胞を活性化し,クロスプレゼンテーション誘導する作用を利用して,CD4陽性ヘルパーT細胞 (Th細胞) とCD8陽性細胞障害性T細胞 (CTL) の両者を効率よく誘導できる樹状細胞 (dendritic cell, DC) を用いた新規細胞ワクチンの開発を目的に研究を行った.平成27年度は,感染防御蛋白ナノ粒子がDCの表面抗原の発現や抗原提示能に及ぼす影響を検討した.具体的には,マウス骨髄からBM-DCを分化誘導し,一方で生分解性ポリマーであるpolylactic coglycolic acid(PLGA)を用いたナノ粒子(PLGAナノ粒子)を作製し,合成した結核菌の感染防御蛋白 (Ag85A,Ag85B,MPT51)のリコンビナント蛋白を結合させ,BM-DCに添加し,その表面抗原の発現,サイトカイン産生,抗原提示能に及ぼす影響を検討した.PLGAナノ粒子添加によって,BM-DCのMHC class II,B7-1,B7-2などの共刺激分子の発現が増強し,IL-12p70などのサイトカインの産生が誘導された.さらに,allogeneic mixed lymphocyte reaction (MLR) を用いて抗原提示能を評価したところ,PLGAナノ粒子はBM-DCの抗原提示能を増強することが見出された.以上より,PLGAナノ粒子は,BM-DCの成熟を誘導し,サイトカイン産生などを通じて,その抗原提示能を高め,アジュバンドとして作用することが明らかとなった.
3: やや遅れている
当初は,昨年度に結核菌特異的免疫応答の誘導におけるPLGAナノ粒子の影響を検討する予定であったが,十分量のリコンビナント蛋白の合成が出来ず,この実験は今年度に行うこととした.
今後は,まず,昨年度の積み残しの実験である結核菌特異的免疫応答の誘導におけるPLGAナノ粒子の影響を検討する.さらに,感染防御蛋白結合PLGAナノ粒子をパルスしたDCワクチン(ナノ粒子DCワクチン)の誘導する結核菌特異的免疫応答の解析を行う予定である.具体的には,結核感染防御蛋白を結合させたナノ粒子DCワクチンをナイーブマウスに接種し,結核菌特異的CD4陽性T細胞,CTL誘導能を,IFNγの産生,テトラマーをつかって定量的に評価すると共に,免疫マウスの脾細胞を用いて結核菌特異的CTLの機能解析を行う.
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 1件)
Respir Investig
巻: 54 ページ: 179-183
10.1016/j.resinv.2015.11.001.
Oncotarget
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.18632/oncotarget.8528.
Geriatr Gerontol Int
10.1111/ggi.12739.
Eur Respir J
巻: 45 ページ: 1624-1631
10.1183/09031936.00199614.
PLoS One
巻: 10 ページ: e0139491
10.1371/journal.pone.0139491.
J Thorac Oncol
巻: 10 ページ: 1590-1600
10.1097/JTO.0000000000000685.
巻: 10 ページ: e0143371
10.1371/journal.pone.0143371.
BMC Microbiol
巻: 15 ページ: 263
10.1186/s12866-015-0600-8.
Clin Biochem
巻: 48 ページ: 125-129
10.1016/j.clinbiochem.2014.11.005.