研究実績の概要 |
肺癌は本邦で最多の癌死の原因であり,甚大な健康被害を与え続けている.一方樹状細胞(Dendritic Cell:DC)を介した細胞性免疫は抗腫瘍免疫に必須の生体反応である.申請者らは,効率的に優れた細胞性免疫をきたす細胞性免疫誘導型DCワクチンが動物モデルにて各種腫瘍および感染症に,極めて有望なワクチンであることを確認,報告してきた.本研究は,細胞免疫誘導型DCワクチンの肺癌患者血液における免疫応答を解析することにより,治療選択の極めて限定されている肺線維症合併例を含む肺癌患者に対し,治療ワクチンとしての研究基盤を確立することが目的である.上記の背景およびこれまでの研究成果をもとに,本研究は細胞免疫誘導型DCワクチンの有用性を確認するため,直接ヒトの血液を用いてワクチンおよび治療応用に展開するための基盤となる研究を行っている.現在までにウシ胎児血清(FBS)を用いて培養した細胞性免疫誘導型DC (TNF-alpha,IL-1beta, IFN-alpha, IFN-gamma, Poly-I:C添加)は,通常型DC(TNF- alpha,PGE2, IL-1beta, IL-6添加)と比較しても表面抗原の発現にはほぼ差を認めないことを確認している.一方で,今後の臨床応用を見据えて無血清培地を用いたDCワクチンの作成を開始している.また樹状細胞上のPD-L1の発現等も確認し,細胞性免疫誘導型DCと通常型DCとの比較検討を行っている.
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